循環器フィジカル・奇脈とは何か?
動脈圧では呼吸性の変動をみることがある。
健常人でも血圧は吸気時に低下し呼気時に上昇するが、3-9 mmHg程度の変動に留まる。
この呼吸性変化が10 mmHg以上となる場合、奇脈pulsusparadoxusとよぶ。
奇脈を認める疾患には、心タンポナーデや喘息重積発作などがある。
心タンポナーデが進行すると、閉塞性ショック(高静脈圧型ショック)を来す。
心タンポナーデでは、左心室の拡張障害をみるので、吸気時における静脈還流の増大に伴い右心室内の圧の増加によって心室中隔が圧迫され、左心室容積が相対的に小さくなる。
左心室容積の縮小によって、左心室から拍出される血液駆出量が低下し、動脈圧(収縮期血圧)が下がる。
奇脈のサイズ(呼気時収縮期血圧―吸気時気時収縮期血圧)が大きければ大きいほど、心タンポナーデの重症度が高いということがいえる。
そのため、奇脈を認めたら、奇脈のサイズ(大きさ)をフォローすることにより、重症度のモニターとすることができる。
奇脈の測定は以下の手順で行う。
1. カフ圧を収縮期圧以上に上げてから徐々にカフを脱気し圧を下げる。
2. コロトコフI音が呼気時にのみ聴かれる最高圧のポイントをみつける。
3. そのポイントでカフの脱気を止め、吸気時に音が消失し、呼気時にコロトコフI音が聴取されるかどうかを確認する。
4. ゆっくりと2mmHgごとカフ圧を下げ、カフの脱気を止める。
5. 上記4を繰り返して徐々に圧を下げ、全ての心拍動でコロトコフ音が聴かれる圧のポイントをみつける。
6. 上記の2と5のポイントの差が10 mmHg以上となる場合、奇脈ありとし、そのサイズ(大きさ)も記録する。
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徳田安春 | |
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