スケッチブック30

生活者の目線で日本の政治社会の有様を綴る

スケッチブック30(昨年の思い出1 木村王位)

2021-01-03 17:27:28 | 日記
1月3日(日)
 年を取ったせいか思い出に心が行くようになった。
 昨年最も心に残った思い出は、木村王位が藤井八段にタイトルを奪われた、王位戦第4戦である。木村王位はマスクではなく、紫頭巾か悪代官がするような、黒の頭巾で顔を覆っていたのが異様であった。
 御承知のように藤井八段の四連勝であった。木村王位は対局後のインタビューで「四連敗は恥ずかしい限り」と、泣き顔であった。記者がもう少し意地悪な質問をすれば木村王位は、間違い無く泣き伏していたことだろう。私は郷土出身という事で藤井八段には好感を抱いているが、「中年の星」の木村王位には、それ以上の贔屓心を持っていた。また彼は解説が軽妙で、将棋特有の長時間の対局も、見ている人を飽きせないので好きだった。46才での初タイトル獲得は、それまでの記録を、8歳引き延ばすものであった。木村王位は羽生さんに次ぐくらいの勝率を誇る棋士であるのだが、どういう訳かタイトル戦に弱い。タイトルを持たない棋士でタイトル戦に出た回数が最も多い、変な記録を持っている。また彼は棋士になったのも23歳と遅い。藤井八段は14歳でなっているのだぞ。そして年齢的には絶望と言われている46歳にして、王位という、数あるタイトルの中でも名人竜王に次ぐくらいの、大きなタイトルを取ったのである。その瞬間人目をはばからず泣いたという。まさに「中年の星」である。
 それが僅か1年後に、将棋超エリートの藤井八段に、あろうことか4連敗で負けたのだ。叩き上げ人間の切なさを感じたのは、私だけではあるまい。これが世の中というものだ、そう思うしかない。