東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

海部陽介,『人類がたどってきた道』,日本放送出版協会,2005

2006-12-12 10:58:47 | 自然・生態・風土
たいへん読みやすい。
ホモ・サピエンス(新人)の進化を解説したもの。

1990年代から、いろんな説が錯綜し、われわれしろうとは、何を基準にし、何を基本としたらいいのかわからん状態になったが、21世紀になって、ほぼ学説は安定してきたようだ。
新人はアフリカで進化した。
10万ないし5万年前にアフリカから拡散した。
新人以前の人類(旧人)は駆逐された。
オーストラリア人もニューギニアの高地人も新人であることに関しては、世界中の人類と同じである。

以上の基本を前提として、やや詳しく進化と拡散が解説されている。

著者はジャワ原人の現地調査をした研究者である。
ジャワで発掘される原人に関しては、現存人類(つまりわれわれ)とは別の系統である。
研究者はしばしば、自分の研究対象を誇大にとらえがちだが、著者の強調するところによれば、いわゆるジャワ原人は、現生人類の祖先ではない。
これは確実である。
ジャワ原人の研究は、なぜ、われわれ新人と異なる人類が、これほど長くジャワ地域で生存を続けたか、という点にあるようだ。

というわけで、人類進化を手軽に知り、サヘルランド(オーストラリアとニューギニア)、北方(シベリヤから北アメリカ)、大洋(リモート・オセアニア)への拡散の概略を知るのに最適。


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