東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

モフタル・ルビス,谷口五郎 訳,『女』

2006-06-15 22:29:37 | 20世紀;日本からの人々
モフタル・ルビス,『虎!虎!』,井村文化事業社,1985.所収。

以下、ストーリーをばらします。
ネタバレあり!

短編小説であるが、ほぼ作者の周辺に起きた事実だと思われる。

大東亜戦争中、日本軍の軍属になった、インドネシア(当時はオランダ領東インドであるが、以下インドネシアとする)生まれのインドネシア・日本の混血人がいた。(父が日本人、母がインドネシア人)
戦争中にインドネシア人の女と結婚する。
戦争が終わって、インドネシアに残ろうとするが、英軍に抑留され、日本に送還(といっても、日本に住んだことなどない、日本語も不自由な男である。)される。
同行の妻は、送還船(復員船)の中で、流産し、以後こどもができない。
日本にいっても、夫は日本社会に帰属できるわけはない。やむなくオランダの会社の仕事をしている。

そんななかで、偶然東京で会ったのが、インドネシア軍政時代に知り合ったひとりのインドネシア人(作者、モフタル・ルビスであるとおもわれる)だ。
彼(つまり、作者であるモフタル・ルビス)は、軍政時代、宣伝部の仕事をしていた。
東京にいたのは、朝鮮戦争取材のための報道員として、ここ東京に立寄ったためである。
日本軍占領時代は、軍属として日本側にいた混血児も、いまや敗戦国の人間である。
一方、作者の分身である報道員は、欧米のジャーナリストとともに、日本人立ち入り禁止の外国人専用クラブに出入りできる身分である(以下、主人公とする)。

主人公は、日本人として日本に暮らす男から、夫婦関係の悩みを聞かされる。
日本に来て以来、夫婦の関係は冷えきっていて、妻は外を遊び歩く毎日である。なんとか、妻を説得し、元の夫婦にもどれないものか、という悩みである。
いやいやながら、主人公は、友人の妻に会う。

「きみが結婚したのだって、相手が日本人とわかってのことだろう?」
「日本が勝つとおもっていたのよ。」
「インドネシアに帰れば?」
「彼は、わたしと別れるつもりはないし、(敗戦国で占領中だから)彼は日本を離れられないのよ。」

妻は、夫の友人である主人公も誘惑するが、主人公は誘惑をしりぞける。
その後、妻は、表面上は夫とのよりを戻したようで、夫婦からお礼の手紙が届く。

というストーリーです(こまかいニュアンスは伝えられないが)。
女の人がこの小説を読むとどう感じるかな?
やな感じと思うか?