先月行われた「ちむドン×2フェスタ」の古本市でこんな本を手に入れました。
「首里城内の女たち」
(山里永吉著/沖縄文教出版株式会社/初版昭和47年)
タイトルの通り、琉球史の女性にまつわる
短編小説集になっています。
また、後半には女性に限らず琉球の歴史上の人物をモチーフにした
短編小説もいつくか掲載されています。
トピック読みしている中で、
おもしろかった話をご紹介。
「心中した琉球王」
(昭和8年(戦前!) オール読物所載)
第一尚氏王統最期の王様「尚徳」の話。
尚徳については幾度となく記事にも絵にもしてますが…
(★ ★ ★ ★ ★)
今回は尚徳、そして金丸との確執を「小説」として読めたのがおもしろかった!
尚徳、正史にも書かれているように
「心おごること日に日にはなはだしく、
ほしいままに罪なきものを殺し、
朝廷では良臣がしばしば諌めはしたが、その言葉をいれず」
(中山世譜)
という描写でした。
そして、金丸や安里大親は「良臣」として。
(安里大親=金丸派リーダー。金丸こそ王に、と叫んだ人)
でも、だからと言って単なる「尚徳=悪」「金丸=善」という
単純なストーリー展開で終わらなかったのが唸りました。
それは、クライマックス。
久高島巡礼の際、
島のノロ「くにちゃさ」と出会い、本当の「愛しい女」を知った尚徳。
くにちゃさに溺れるあまり、
首里に戻らぬ日々が続きます。
ひと月以上もたち、やっと、首里に戻る気になり、
くにちゃさも連れて首里に帰る船中、
首里で起こった革命を知らされます。
「御主加那志!一大事でございます」
「何事じゃ!」
「首里に、首里に革命が起こりました!」
*
「与那原の漁夫が今船に来ての話でございますが、内間御鎖金が!」
「金丸が?」
「御母君美里御殿も、既に―――」
「殺されたと申すか―――」
尚徳は悔しさと怒りに油汗を流し激しく動揺しますが、
くにちゃさの言葉に我に返り、悟ります。
「どう、どうなされました」
くにちゃさの言葉に、尚徳ははっと我にかえった。
そうだ、わしにはくにちゃさがあったのだ。
王位が何だ、天下が何だ、この法悦を抱いて、わしに何の惜しいものがある――。
尚徳は、そう考えると、何とも言えぬすがすがしい気持ちに心が晴れ渡って、
今迄王位に噛りついていた自分がなんだか貪欲な餓鬼のようにあさましく思えた。
―――欲しいものはくれてやる。
わしは、くにちゃさとこの陶酔の恋を抱いていれば満足だ。
この陶酔が、あさましい王位簒奪者達にわかるものか。
*
「くにちゃさ、わしと共に死んでくれ」
くにちゃさの腕が、熱情的に尚徳の首に巻きついた。
尚徳は、金丸奴!一生かかってもこの感激が味わえるか
という優越感に満足しつつ、
片足を船べりにかけると、
くにちゃさを抱いたまま、
碧玉のように澄み切った海の底に静かに沈んでいった。
金丸派によるクーデターはいくつかの説があります。
尚徳没後と、久高島巡礼で不在中のものと。
この小説では「久高島巡礼説」をモチーフにしての話ですね。
この話では、金丸も尚徳も、
またちょっと違った人間性を味わうことができて新鮮でした。
やっぱり歴史書とか、歴史紹介本だけではなく、
こういった人間ドラマが味わえる小説(物語)って、楽しいですね!
実はこの本、先ほど気付いたのですが、
また1つ興味深い話が掲載されていました。
ナント!金丸が尚泰久に仕える前までの話。
まだ、一放浪者だった金丸が、
同じく放浪者だった阿麻和利と会っていた!
そして、御茶当真五郎(出た!)、護佐丸、尚泰久―――…。
(つづく!)
歴史ブログ 琉球・沖縄史
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