フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 7~9月期のテレビドラマもそろそろ大詰めとなってきました。
 今期のドラマで前評判というか期待の高かったのは『スローダンス』(月9)で、実際にスタート当初は20%以上の視聴率をあげていました。しかし、回が進むにつれて視聴率が下がり、逆にじわじわと視聴率をあげて今期トップに上がってきたのが、ベストセラー本のドラマ化(ドラマの前に映画にもなった)『電車男』でした。(もちろん、いつも言うように、視聴率が作品の質に比例するわけではありません)
 この『電車男』のように、原作・映画・テレビドラマと作られていくのは『世界の中心で、愛をさけぶ』などにも見られる現象で、けっして珍しくないことです。ただ、この作品の原作は、ネット上の多数の人々のやりとりで全体が構成されるという特殊な作品でしたので、その分だけ原作とドラマの違いは大きくなっているように思いました。
 

 それはともかくとして、ドラマ『電車男』が視聴率を上げてきたのはよくわかる気がします。
 まずは、「アキバ系おたくの世界ってどんなものなんだろう?」という関心を引きつけていくこと。フィギアだのコミケだのに主人公がかける熱意が、面白おかしく、それでいてとてもあたたかい目で描かれます。そして、そういう世界を扱いながら、ストーリーそのものは「障害の大きい恋愛をはらはらさせながら見せる」というラブストーリーの王道をいっていること。これは多くの視聴者を引きつけるだろうなと思いました。ちなみに、この場合の障害の大きい恋愛とは、「絶対こんなきれいな女性に好かれないだろうと思われるようなダサイ男性の恋愛」という意味です。
 なお、『スローダンス』と『電車男』の両方に、味のあるわき役の温水洋一さんが同一人物(脱サラしたタコライス屋)の役で登場しています。



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