フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 



(明治書院主催の研修会・東京)

 今週(8月4日~8日)は、中学・高校の先生方の研修が多く開催されていました。

 私は32歳のときに大学の専任教員になりました。人によって違いますが、大学教員になる年齢は一般社会よりもかなり遅くなっています。一方、小・中・高校の先生方は、多くは大学を卒業してすぐ20代前半で教員になり、「先生」と呼ばれます。しかし、小・中・高校の先生であろうと大学教員であろうと、教員になってからも勉強を続けることは変わりありません。大学教員の場合は、「講師→助教授→教授」(今は「助教→准教授→教授」)と研究業績によって昇進していきますし、小・中・高校の先生方にとっても、先生になってからの研修活動が盛んにおこなわれています。

 そのような研修が8月1週目である今週に特に多くおこなわれていて、私は今週3回、そのような研修の講師を務めました。そのうち2回は教科書会社(明治書院)主催の研修会で、場所は東京と大阪。テーマは「村上春樹の世界と教科書教材」でした。もう1回は神奈川県立教育センター主催の研修会で、場所は神奈川近代文学館(横浜)。テーマは「国語教科書小説のこれまでとこれから」でした。


(神奈川県立教育センター主催の研修会・横浜)

 このところ私は、中央大学学術講演会(文化講演会)で多くの一般の方に接する機会があります。その一方、今回のような中学・高校の国語の先生方向けの研修会の講師を務めることもときどきありました。
 近年よく言われているように、日本の小・中・高校の先生方は世界的に見てもたいへん多忙です。そんななかで、初任者研修や数年ごとの教員研修としての目的や、自主的な研鑽の目的のために時間を費やして来てくださっているのですから、私もその時間とお気持ちを無駄にしないように、自分なりに努力して準備をし、講師を務めました。


(明治書院主催の研修会・大阪)

 明治書院主催の研修会の方は、「近年の国語教科書には村上春樹作品がよく収録されているのですが、どのように授業するか苦労されているという声をよく先生方から聞きます。何かお役に立てないでしょうか。」という明治書院の社員さんからの御依頼でお引き受けしました。
 村上春樹作品、特に短編から「作者の意図」を過度に読もうとするのは危険だけれど、作家論的な分析をおこなえば、そこに作者の根底にある思想とのつながりは見えてくるというのが、私の話の趣旨でした。
 神奈川県立研修センターの方は特定の作家・作品についての御依頼ではなく、「初任者研修や先生方の自己研鑽のために、国語教科書教材について新しい視点を提供してください。」という御依頼をいただいたので、特定の教材について限定せず、現在の国語教育が抱えている困難さを前提にした上で、特に小説教材をこれから国語という教科で扱うためには、どのような目標を設定していくことが望ましいか、という話をさせていただきました。

 私は20代の頃に高校の非常勤講師を短期間したことがありますが、その後、30年以上、中学・高校等の教壇からは遠ざかっています。国語教科書の編集委員を長く続けていますし、国語教科書についての論文も何本か書いていますが、具体的に授業案をお示しするようなことはできません。それでも、研究者、教科書編集者の立場から、普段考えている、国語教科書と小説教材について、このようなお話をさせていただきました。
 実際に中学生・高校生の指導を担当されている先生方に対して、少しでもお役に立てる時間となっていたことを願っています。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 映画『小野寺... 7~9月期の... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。