フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 




 今日2月23日(土)、神奈川県の桐光学園で特別授業をしてきました。学園の100名を越える生徒さんたちが集まってくれて、私にとっても自分の学問内容を中高生に聞いてもらうたいへん良い機会となりました。
          
 桐光学園での名称は「大学訪問授業」と言います。年間18回の授業をおこない、生徒さんがその中から関心のある授業を選んで参加する方式だそうです。興味のある方はこちらを御覧ください。→「
桐光学園・大学訪問授業
 以前にも書いたことがありますが、近年、こうした特別授業が増えています。高校に限らず、「キャリア・デザイン」という考え方が発達し、自分の生涯設計をするための教育が導入されるようになりました。したがって、以前は就職対策という卒業時の問題に限定していたことが、自分の一生という長いスパンでものを考えるための時間というものに変化してきています。
 そのため、大学では企業や社会のさまざまな分野の人に来ていただき、講演やシンポジウムをおこなっています。同様に、高校でも中学でも、より上の学年の、つまり高校なら大学関係者や社会人の話を聞かせる機会を増やしています。
 もちろん、ただ学外の人の話を聞かせればそれで「キャリア・デザイン」になるというわけではなく、そこに、プログラムする側、提供する側のコンセプトが必要なのは言うまでもありません。その点で、この桐光学園は年間18回にも及ぶ訪問授業を運営し、毎回異なる分野の大学教員に大学の授業内容を提供してもらう、という運営の趣旨がきわめて明確です。私はともかくですが、各分野の最先端をいくいわゆる有名教授がそろっていて、よくこれだけのメンバーをそろえたなと感嘆するほどでした。
           
 そこからも、現在の最先端の学問にふれさせ、生徒の関心や意欲を喚起したいという学校側の熱心さがよくわかります。しかもこの連続講義の講義集を出版するとのことで、学校側のこの行事への力の入れ方が伺えます。
 それから、桐光学園は中・高一貫校。したがって、今日の私の授業にも中学生が大勢来てくれていました。大学の授業を聞くのが早ければ早いほど良いというものではありませんが、その分野に関心のある生徒さんなら、中学生でもそこから得られるものは多くあることと思います。そこで自分の関心につながるヒントが何か得られれば、その後の中学高校生活に活かされることも多いことでしょう。
 実際に、今日の私の授業を大勢の生徒さんが熱心に聞いてくれていましたし、後で設けられた質問時間には、多くの生徒さんから質問も出ていました。60分1回きりという時間の制約の中で、私が省略しなければいけなかった内容に関する質問もありました。ということは、生徒さんたちが私の話を受け止めて、それを即座に次に発展させる思考力を持っているわけで、授業をする側として、たいへん手応えのある時間をもつことができました。今後もこうした機会を通して、大学生だけでなく、その他の年齢・所属の皆さんに自分の専門分野で考えていることを問いかけていければと思います。
          



コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
Unknown (T)
2008-02-25 23:27:30
桐光出身で現在中大の国文に在籍していますが、私の頃にはこうした講習はあったかどうか・・・あったとしてもそれ程に軽視されていました・・・

進学指導などの際に文学部や国文と答えると本当にそれでいいのか、商経の方が就職に有利などと言われたことも一度や二度ではありません
ぜひこうした制度も通じて、より多くの高校生そして先生方に、文学(部)に対し漠然と持っているイメージ、「現実から離れた学問」「就職できない」といった古いマイナスイメージも払拭してもらいたいです
 
 
 
コメントありがとう (宇佐美)
2008-02-26 01:51:42
中大国文の学生さん、コメントどうもありがとう。
     
文学部や文学専攻が就職に不利という意見は昔のことだと思っていたのですが、最近でも言われるんですね。これは私たち文学部関係者の努力が足りないのかもしれません。
実際に学部志願者数や就職率などで負けているとは思えませんし、学問の面白さならなお負けない自信もあります。それを学外の多くの人にも理解していただかないといけませんね。
そういう意味でも、学外の特別講義やイベントへの御招待は、スケジュールが許す限り、喜んでお引き受けしていこうと思っています。
     
 
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