フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 書くのを忘れていましたが、その後も『お願い!ランキングそだてれび』に出演させてもらっています。文才のある芸人さんの書いた文章に対して、文学研究者の立場からコメントするのが私の役割です。当面の出演予定は下記の通りです。9月13日分からは、芸人さんたちにこれまで書いてもらった文章の中から、ベスト作品を選ぶ企画に移ります。

 『お願い!ランキングそだてれび』
  9月6日(火)24:45~
  9月13
日(火)24:45~

☆-----------------------------------------------------☆
 さて今日のテーマについて書きます。
 今から4年以上前に放送された作品ですが、『明日の君がもっと好き』というテレビドラマがありました。今日はこの作品のことを書きます。特別に高い視聴率や高い評価を得た作品とはいえませんが、私には強い印象が残っています。

 この作品は、一種の群像劇ともいえる構成をとっています。そして、描かれる誰もが、なんらかの困難を抱えて生きています。主な登場人物は下記の通りです。

松尾 亮(市原隼人)
 造園職人。妹のように育った香との結婚を勧められるが、茜に惹かれていく。
里川 茜(伊藤歩)
 社長秘書。妹に婚約者を奪われた後は不倫の恋愛を繰り返す。
丹野 香(森川葵)
 自分が同性愛者なのかわからず、性的アイデンティティに悩む。
城崎 遥飛 (白洲迅)
 エリート社員だが、幼児のときの母親の虐待から女性を愛せない。
黒田 梓(志田未来)
 茜の妹。姉の婚約者と結婚したが、香に関心を持ち始める。

 この作品がなぜそれほど印象に残っているかといえば、その提示している課題が鮮烈であるのと同時に、それが描ききれていないという惜しまれる部分もあったからです。上記のように、登場人物はみな困難を抱えて、悩みながら生きている人たちです。その人たちが苦しんで自分の生き方を見出そうともがいているようすを描き出しているところに、私は強い感銘を受けました。
 その一方で、この作品の放送回数はわずか7回。これだけの複雑な問題が設定され、重要人物の人数が多いのにもかかわらず、残念ながら消化不良のまま終わってる印象はありました。一言でいえば、大きなテーマに取り組んだものの、描こうとしたことが大きすぎて、十分に描ききれてていなかった、そういう作品だったように思います。そういう欠点も含めて、私には印象深い作品だったのです。
 脚本は、ベテラン脚本家の井澤満。この脚本家は、うすっぺらな娯楽作品は書かない方なので、この作品もその傾向が顕著に出ていました。その井澤の、おそらく最後のテレビドラマ作品がこの『明日の君がもっと好き』だったと思います。DVDも発売されておらず、今見るのが困難な作品なだけに、こういう重要な作品があったことを、ここに書きとどめておきたいと思いました。

※このブログはできるだけ週1回(なるべく日曜日)の更新を心がけています。






コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 高校野球・仙... 3年ぶりの対... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。