フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 





 放送されているテレビドラマへの感想を、そのクール(3か月間)ごとに書くようにしています。今回は、その3回目です。

 前々回は
『リスクの神様』 (水曜22時、フジテレビ系)、『恋仲』 (月曜21時、フジテレビ系)、 『表参道高校合唱部』 (土曜21時、TBS系)の3作品について、前回は『花咲舞が黙ってない』 『ホテルコンシェルジュ』 『エイジ・ハラスメント』 『37.5℃の涙』 の4作品について書きました。
 今回は、以下の作品についての感想です。 



『ナポレオンの村』 (日曜21時、TBS系) 12.7%→7.4%→9・1%→8・5%→ %

 限界集落といわれる、廃村寸前の村に赴任していた一人の公務員・浅井栄治(唐沢寿明)。誰もが廃村をやむを得ないと思っている村の良さを次々に見出し、村の人びとの気持ちを動かしていきます。スカイランタン、滝壺レストラン、お見合いイベント……と、うまくいくはずがないと思われる企画を次々に成功させていきます。
 主人公があまりにもスーパーマンに描かれていますし、すべてがうまくいきすぎるという気はします。しかし、ドラマには夢を見させてくれるという機能もあるはずです。従来のドラマのような、派手さも恋愛要素もなく、多くの視聴者をひきつけることにはならないかもしれませんが、限界集落の村とその人びとの変わっていくようすを、毎週期待しながら楽しむことのできるドラマになっています。
 また、主人公に振り回されながらも良き理解者になっていく岬由香里(麻生久美子)のコメディエンヌぶりは見ものです。

『ど根性ガエル』 (土曜21時、日テレ系) 13.1%→8.5%→6.4%→8.7%→7.0%→7.0%

 1970年代の連載漫画で、72年~74年にテレビアニメとして放送された作品の実写版リメイク作品です。
 『ドラえもん』ののび太やしずかちゃんが大人になったCMがよく流れていましたが、それと同じように、『ど根性ガガエル』の子どもだったひろし、京子、五郎、ゴリライモらが、みな30歳前後の大人になっている姿を描いています。(ピョン吉は今も変わらずTシャツの中の平面ガエル)
 アニメドラマの放送時に中学生だった私には懐かしさもあり、同時に大人になった人物たちの悩みや、子どものままではいられないいらだちも理解できます。その意味で、子どもの世界と大人の世界の対比をしながら見ることができます。ただし、今はじめてこのドラマを見る若い視聴者にはどうか。「ど根性」が意味を持った時代を知らない視聴者にとっては、この作品の根底にある世界観に親近感を持てないところはあるのかもしれません。



『デスノート』 (日曜22時半、日本テレビ系) 16.9%→12.3%→8.7%→10.6%→8.2%→10.2%→11.6%→11.4%

 多くの人に知られたマンガ作品が原作で、すでに映画、アニメ、舞台、ゲームなどなど、多くのことなるジャンルで作品化されています。それだけに、今回の実写テレビドラマ化には注目が集まり、初回の高視聴率につながったと思われます。
 ただ、これだけ多くのジャンルで作品化されているだけに、それらの印象と比較されてしまうのはやむを得ないこと。「Lの病的なところが出ていない」「ミサが太目でかわいくない」など、ネット上でいろいろな批判の書き込みを誘発しているようです。しかし、それもまた有名な作品だからこそ。こうなるともはや、他の作品と比較しながら「ツッコミ」を入れて楽しむドラマというところにこそ、この作品に意味があるのかもしれません。
 「Lがただのナルシストにしか見えない」とか「ミサミサじゃなくてブサブサだ」とか、文句を言いながらも見てしまう。そういうドラマとして流通していると思われます。




『民王』 (金曜23時台、テレビ朝日系) 6.5%→7.0%→4.8%→6.6%

 今、テレビドラマの原作として大流行の池井戸潤の原作です。総理大臣とおバカの息子の体がある日入れ替わってしまうという設定。入れ替わりものは、入れ替わった二人の人物のギャップが大きいほど面白いのですが、今回はそれがおおいに活かされています。特におバカな息子になってしまう総理大臣役の遠藤憲一の演技におおいに笑わされます。
 ちなみに、遠藤憲一はもともとハードボイルド的な役によく使われていましたが、近年コメディによく出演しているのは、そのギャップについ笑ってしまうからでしょう。私が最初に遠藤憲一に注目したのは『モナリザの微笑』(2000年、フジテレビ系)でした。ここで遠藤憲一は国際的な絵画の贋作や売買を操作するフランス警察官を演じていました。その第一声のセリフが「フランス秘密警察、レオン内藤だ!」というもの。日本の俳優で「フランス秘密警察、レオン内藤だ!」なんていうセリフが似合う人がいるというのが驚きでした。
 その遠藤憲一が今やコメディに引っ張りだこ。ハードボイルドなイメージの人ほど、コメディに出演するときのギャップが笑いを引き出すということでしょう。


『探偵の探偵』 (木曜22時、フジテレビ系) 11.9%→7.5%→8.7%→8.7%→7.4%→6.5%→8.2%→5.4%

『刑事7人』 (水曜21時、テレビ朝日系) 11.8%→10.6%→9.0%→9.4%→6.6%→9.1%→8.4% 

『最強のふたり』 (木曜20時、テレビ朝日系) 9.7%→6.2%→6.5%→6.7%→6.5%→8.0%

 この3本はいずれも、近年のテレビドラマにたいへん多い警察・犯罪ドラマ。今やテレビドラマにおける最大ジャンルと言っていいでしょう。それだけに、いかにそれぞれの作品の個性を出せるかが問われます。『探偵の探偵』は近年のテレビドラマには珍しいハードボイルド作品。警察もの、犯罪ものと言ってもコメディ色の強い作品が多い中で異色作。
 『刑事7人』は、謎解きを重視した作品で、小説でいえば本格ミステリーに近い作り。また、近年の警察ものは「正義」「使命感」を前面に出すよりも、一風変わったキャラクターが異色の才能を発揮して謎を解決する、という設定が主流。この作品はその濃いキャラクターを7人揃えたところに特徴があります。
 『最強のふたり』はいわゆるコンビもの(男性同士ならバディものですが、こちらは男女のコンビ)。ただし、女性上司(名取裕子)と定年後の再雇用嘱託刑事(橋爪功)というのが、これまで見たことのない組み合わせ。事件を解決すると言っても特に気張るところがなく、力の抜け具合がなかなか心地いいです。


 夏ドラマは大きなヒット作がなく、視聴率的に好調なのは『花咲舞が黙ってない』くらい。各メディアでは辛口の批評が目につきます。もともと夏は休暇などもあり、視聴者が安定的にテレビの前に座りにくい季節。『半沢直樹』などの大ヒットが出ることもあるものの、平均的には視聴率がとりにくい時期です。そんな中で、各ドラマが特徴を出そうと工夫している様子はよくわかり、これが今後の作品作りに活かされていくことを願っています。


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 孤独のグルメ ... 高松市で講演... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。