フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 テレビドラマへの感想を書く恒例の回です。
 とはいうものの、あいかわらずの校務多忙でまとめて書く時間がないので、まずはいくつかの作品を見た印象だけを書いておきましょう。

 今回感じたことは、「恋愛ドラマが難しい時代の恋愛ドラマの描き方」ということです。
 従来から言われているように、現代は恋愛ドラマが流行らない時代です。今の大学生たちにバブル期の「トレンディ・ドラマ」などを見せると、「この時代の人たちは、どうしてこんなに恋愛に熱心なんですか?」と驚いた反応を示されることがあります。それくらい、今の若者たちに、ベタな恋愛ドラマは受けないということになっています。

 私も、今は恋愛ドラマは以前のように流行らないことは、確かなことだと思います。ただし、その時代にはその時代なりの恋愛ドラマがあるのではないかとも思っています。
 たとえば、2015年1~3月期放送の『デート』(月曜21時、フジテレビ系)は、引きこもり男性と極端なリケ女の恋愛ドラマ。どちらも恋愛への情熱などまったくないように見えながら、その二人が少しずつ少しずつ、恋愛する気持ちを持っていくというところに、今の時代に即した恋愛ドラマであることが感じられました。端的に言えば、恋愛への情熱が最初からあふれているような人物は、今の時代の雰囲気に沿っているとは言えないのです。

 その観点から見て、興味深かったのは、『世界一難しい恋』 (水曜22時、日テレ)でした。
 大会社の社長で見た目も悪くないのに、まったく人の気持ちがわからず、女性にも持てない鮫島零治(大野智)。その零治が突然に社員の芝山美咲(波瑠)に好意を持ち、不器用きわまりないアタックを始める、というストーリーです。

 もう一つ同じ関心を持ったのは『私結婚しないんじゃなくてしないんです』 (金曜22時、TBS系)。
 こちらは、美貌の女医ながら、39歳、独身の恋愛弱者が主人公です。橘みやび(中谷美紀)がその美貌の女医で、キャリアもあり、年収も多く、プライドが高い。それなのに恋愛はまったくうまくいかないという設定になっています。

 恋愛下手な人物を描いたドラマは以前からずっとありますが、 この二つの作品に共通するのは、恋愛を強く求めて得られないのではなく、もともと恋愛などたいしたことではないと思って、かなりの年齢まできてしまっているということです。
 もともと恋愛に熱意のない人物が、少しずつ恋愛を意識していくという点で、『デート』に共通する要素があります。しかも、『世界一難しい恋』の零治は美咲に出会うことで変化し始め、『私結婚しないんじゃなくてしないんです』のみやびはかつての同級生と再会することで変化し始めます。その点でも『デート』に似た部分があり、これからこの二つの作品がどのように展開していくかを楽しみに見ていきたいと思っています。

他の作品についてはまた後日書きたいと思います。


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。 



コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
Unknown (kanyine)
2016-04-22 07:31:32
いずれも恋愛が苦手な30代人の話ですが、楽しく見ています~
 
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