背景が暗いときは明るい色が手前に見え、背景が明るいときは暗い色が手前に見えるというふうに言われています。
一番上の図で見ると左側では黒い背景に明るい正方形ほど手前に見えます。
右の図では黒い正方形のほうが手前に見えるというのですが、ハッキリそう見えるというわけではありません。
一般的には黒い色は収縮して見え、同時に後退して見えるとされているので、黒い色のほうが手前に見えるといわれても納得できないのです。
しかし、真ん中の左のほうの絵をしめされて、黒いほうが手前に見え、明るい灰色ほど後退して見えるといわれればたしかにそのように見えます。
絵画の手法の大気遠近法はこの原理を使ったものだという説明もあり、風景を描くとき手前のものを濃く描き、遠くのものを薄く描くこと手遠近感が出るといいます。
水墨画では近景が濃く、遠景が薄く描かれていますし、実際の経験でも遠くの山はぼやけて見えるので、やはり背景が明るいときは濃い色が手前に見えるのかなと思ってしまいます。
ところが左の図を逆さまにしてみると右の図になるのですが、この場合は山の絵としてはおかしな形ですが、遠近関係は逆転して見えます。
黒いほうが奥に、白いほうが手前に見えるので、色の薄いほうが遠方に見えるとは限らないのです。
この結果だけから見るならば、図の中で下にあるほうが近く感じ、上にあるほど遠くに感じるのではないかと思われます。
色の明るさは遠近感と関係があっても、それだけで遠近感が決められるわけではないのです。
ところで一番上の図は、四角形に輪郭がなかったのですが、輪郭を加えるとどうなるかを示したのが一番下の図です。
背景が黒の場合は明るいほうが手前に見えるという関係は同じですが、遠近感はよりハッキリ感じます。
背景が白の場合はどうかというと、この場合は上の場合と違って明るいほうが手前に見えます。
そうしてみると、色が薄いから後退して見えるということではなく、輪郭がハッキリしないから手前に見えなかったのです。
色だけで見るならば薄いほうが近くに見え、黒いほうが遠くに見えるのが、輪郭がハッキリするかどうかで見え方が逆転するのです。
かつては、晴れた日などに東京から富士山が見えるとき、とても大きくまた近くに見えることがありました。
空の青さに対して雪の白さがくっきりとした輪郭を作ったので、距離が遠い割りに大きくて近いように見えたのでしょう。
遠近感を感じさせる要素はいくつもあるので、一つの要素だけに注目すると説明が出来なくなる場合があるのです。