60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

注意と色の錯視

2008-11-29 22:53:42 | 視角と判断

 図AとBを見比べたとき、赤の部分はAのほうは朱に見えますが、Bのほうは赤紫色に見え、色がまったく違うように感じます。
 実際は同じ色なのですが、そういわれてみてあらためて見直しても、やはり同じ色には見えません。
 ところがAの右端の赤い長方形と、Bの左端の赤い長方形を比べてみると、ほとんど同じ色に見えます。
 つぎに、Bの左端の上の赤い長方形をしばらく見てから、となりの左から二番目の赤を同時に見ると、二つの赤い長方形はほぼ同じ色に見え、赤紫でなく主に近い色に見えます。
 またつぎに、左から二つの赤い長方形を見ながら同時に三番目の赤い長方形を見ると、これも赤紫ではなく、朱に近い赤に見えます。
 
こうして赤の部分を見る範囲を右に広げていくと、赤い部分は全体として青紫ではなく、やや朱に近い赤に見えます。
 最初に見たときの赤紫色にくらべると、、鮮やかな赤に見えるのですが、これは順応によるものではありません。
 順応というのはカラー写真などを、しばらく見続けると色の鮮やかさがだんだん失われてくるように感じるものですが、これは映像の処理の過程が疲労によって弱まるためだと説明されているようです。
 赤の長方形を左から順に注視していくという過程は、注意を赤に集中していく過程で、赤に注意が集中された結果、まわりの色からの干渉が弱められた結果です。

 赤に注意を集中する方法としては、B図が赤と黄色の横縞の地の上に、青い棒が乗っていると考えて、青い棒の下にある赤の横縞を見ようとするという方法があります。
 青い棒の奥に赤い横縞があるという風に意識してみると、赤に注意が向き青の色の永久が少なくなって、紫がかって見えていた赤が、朱に近い赤に見えるようになるのです。
 このような現象は、黄色の場合についてもおきます。
 何気なく見たときはBの黄色部分は青みがかって見え、A図の鮮やかな黄色に比べるとずいぶんくすんで見えます。
ところが赤の場合と同じように、黄色部分に注意を集中して見ると、黄色の部分は鮮やかな黄色に見えるようになります。
 とくに横に三本ある黄色の真ん中の帯に注意を向けて見ると、上下の黄色い帯も目に入り、それにつれて黄色の帯全体が鮮やかな黄色に見えるようになります。

 AでもBでも小さな赤の長方形は、青と黄色に囲まれているのですが、Aでは青よりも黄色に接する面が多く、Bでは青に接する面が多くなっていて、接する面の大きい色の影響を多く受けて見え方が変化しているのです。
 接している面による影響を少なくするために、注意を集中したり、見るときの意識を変えれば、本来の色に近づいて見えるのです。
 何気なく見たときは「見える」という現象で、錯視が起こりやすいのですが、意識的に注意を集中すると本来の見え方になるときもあるのです。


注意の分割と集中力

2008-11-27 23:14:27 | 視角能力

 縦の4本の線は白と黒のヒモがより合わせてあるように見えますが、このより合わせたヒモは斜めに見えます。
 ところがこれはすべて垂直線です。
 黒と白の四角形は垂直に並んでいて、黒の四角形を見た場合、垂直に並んでいる同じ列の三つの四角形は同じであることが見て取れます。
 したがって、黒い四角形の上を通っている斜めの白い線は、垂直線上にあることがわかります。

 同じように、縦に並んでいる三つの白い四角形は、垂直に並んでいて、その上を通っている斜めの黒い線は垂直に並んでいるということがわかりす。
 このように一つ一つの部分を見た結果からは、斜めの白い線も黒い線も垂直に並んでいることが、理屈の上ではわかります。
 理屈の上では、白い線も黒い線も垂直に並んでいるのですが、実際に目で見ると、どうしても斜めに並んでいるように見えます。
 
 ここで目をすこし寄り目にして、立体視をして4本の線が五本の線に見えるようにします。
 そうすると5列の四角形のうち中側の3列が浮き出て見え、同時に5本の線はすべて垂直に見えるようになります。
 このときより合わさって見えていた真ん中の白と黒の線は、はなれて四角形の面からやや下方に突き出ているように見えます。
 また両隣の場合は上方に突き出ているように見えます。
垂直に並んでいるように見えはするのですが、立体的に見えるようになるのです。
 (ただし、寄り目にして立体的に見えるようになった場合でも、5列でなく6列に見えた場合は四角形の面から白と黒の線が突き出ているように見えるのですが、並び方は垂直でなく、斜めに見えてしまいます。)

 立体視をしなくても、たとえばどの列でも垂直に並んでいる3つの黒い正方形に同時に注意を向けて見ていると、白い線が垂直に並んでいるように見え、それにつれて黒い線も垂直に並んで見えるようになり、より合わさったねじれひもは垂直に見えるようになります。
 このとき、黒い四角形のみに注意を向けることが大事で、線のほうに注意を向けてしまうと斜めに見えてしまいます。
 注意を分割できる能力と同時に集中力が必要なのです。
 同じように、縦に並んでいる3つの白い四角形だけに注意を向けて見ても、やはり白と黒の線は垂直に並んで見えるようになります。
 ねじれひもの錯視というのは強烈な錯視で、どうしても斜めに見えてしまうような感じがしますが、見方がコントロールでき、集中力があれば実態を見極めることができるのです。。


片側から見るクセ

2008-11-25 22:58:20 | 視角能力

 図Aでは1番と3番が凹んで見え、2番と4番が凸型に見えると思います。
 1番と3番は上が陰になっているように見えますが、2番と4番は下が陰になっているように見えます。
 体験的には光が上から来る場合が多いので、2番と4番が凸型に見えるのです。
 こういう例を見ると、上の部分が明るくて下の部分が暗ければ凸型に見えるだろうと一般化してしまいがちになります。

 ところがB図を見た場合はどうでしょうか。
 上が明るく、下が暗いほうが凸型に見え、上が暗く下が明るいほうは凹方に見えるというのであれば、1番と3番が凹んで見え、2番と4番が凸型に見えるはずです。
 実際には、人によっては1番が凸型に見えたり、3番が凸型に見えたりします。
 右から見るクセのある人は1番が凸型に見え、逆に左から見るクセのある人は3番が凸型に見えます。
 また、2番と4番が両方とも凸型に見えたとしても、どちらか一方のほうが他方よりもより浮き出て見え、より凸型に見えたりします。
 つまり、右から見るクセのある人は4番のほうが3番よりも浮き出て見え、左から見るクセのある人は2番のほうが浮き出て見えるのです。

 このような違い出てくるのは、A図の場合は上の部分と下の部分が狭いので、注意を引きにくく、左右の横の部分は長いので注意を引きやすいためだと考えられます。
 同じように1番と3番が両方とも凹んで見えたとしても、左から見るクセのある人には、1番のほうが3番より凹んで見えます。
 つまり、右側から見るクセのある人は、3番と4番の凹凸がハッキリと対照的に見え、1番と4番の差はハッキリと見えません。
 そこで、意識して左から見るようにすれば、1番が凹んで、2番がハッキリ浮き出て差がハッキリ見えるようになります。

 こうした経験をしてから、A図のほうを見ると単純に3番と4番が浮き出て見えるとしていたのが、左右どちらから見るかによって2番の萌芽より浮き出て見えたり、4番のほうがより浮き出て見えたりします。
 そうして、1番と2番との凹凸の差のほうが、3番と4番の凹凸の差がハッキリ見えるようであれば、左側から見るクセがあり、3番と4番の差のほうがくっきり見えれば、右のほうから見るクセがあるということがわかります。
 左から見るクセがある人は、利き目が左であるということかどうかはわかりませんが、どちら側から見る癖があるかがわかれば、別の側からも見る訓練をして、視覚のコントロール力を向上させることができます。


視覚と体のクセ

2008-11-22 23:35:06 | 眼と脳の働き

 利き腕があるように、利き目というものがあるといわれていますが、利き目と言うものがどういうものかはハッキリわかりません。
 どちらの目が利き目かを簡単に知る方法として、親指と人差し指で輪を作り、手を顔から離し、この輪を通して遠方のものを見た場合、両眼でみたときと片目でみたときを比べ、位置のずれが少ないほうが利き目だとするというのがあります。
 たとえば右手の指で輪を作り、これを通して遠方のものをみたとき、右目でみたときより左目でみたときのほうが、両眼でみたときより位置がずれていなければ、左目が利き目だというわけです。
 こうしてみると、たしかに片方の目で見た場合は、もう片方の目で見た場合よりも位置のずれが小さいので、なるほどこれが利き目かと思ってしまいます。

 ところが右手で輪を作るのではなく、左手で輪を作ってみるとどうでしょうか。
 右手で輪を作ったときと同じ側の目で見たほうがずれが少ないかというと、そうではなく今度は反対の目で見たほうがずれが小さく見えたりします。
 これは指で作った輪が、顔の正面にきているかどうか、顔が見るものに正対しているかどうかで、見え方が違ってしまうためです。
 人によってはクセがあって、ものを見るとき体を正対させず斜めに構えてしまう人もあり、また右手よりも左手のほうが指で作った輪を正面に持ってきやすいといった人もいます。
 つまり、この方法ではものを見るときの姿勢とか、体のクセを知ることができるということで、利き目がどちらかが分かるわけではないのです。

 たとえば、図の左側の12個の円形を見るとき、上のほうが明るい円は前に膨らんで見え、上が暗い円は凹んで見えます。
 これは光が上から来るという体験があるために、脳が上のほうが明るい円を凸型と解釈するため、凸型に見えるといわれています。
 しかしこれは図を見るとき、視線が上からやや下に向かっているためで、目の位置を下げて上目づかいにみると、下が明るい円も凸型に見えるようになります。
 図を見るとき、視線を下から上に上げてみてゆく、つまり明るいほうから暗いほうに向かって見ていけば、凹方に見えていた図形が凸型に見えるようになるのです。

 右側の12個の円は左側が明るいものと、右側が明るいものとあります。
 これらは上から光が当たっているわけではないので、凸型に見える理由はないのですが、あるものは凸型に見えたり、あるものは凹型に見えたりします。
 もしものを見るとき、左から右に見ていくクセがあれば、左側が明るい円が凸型に見え、右から左に見ていくクセがあれば右側が明るい円が凸型に見えるでしょう。
 日常生活ではとくに左から光が来るとか、右から来るとかいったことはありませんから、左が明るいほうが凸に見えるという人は、左から右へ視線を動かすクセがあるといえます。
 しかしこのことが、左目が利き目だということを示しているかどうかはわかりません。
 ただ、見るときのクセが自覚できたわけで、逆方向の見方をして、見え方が逆転するようにすれば、視線のコントロール力が強化されます。


注意の幅

2008-11-20 23:23:27 | 注意と視野

 左側の図を見ると、白と黒の縞模様の棒が5本、縦に並んでいますが、垂直でなく斜めに見えます。
 右側の図は、左の図の灰色の部分を白くしたもので、黒い部分だけが見えるようになっています。
 右側の図を見ると、黒い棒は縦に垂直に並んでいるのに、やや斜めに並んでいるように見えます。
 この黒い棒は曲がって見えますが、二つの長方形を少しずらしてくっつけたものです。
 縦の列は同じ形の図形が垂直線上に並んでいるので、垂直に見えるはずなのですが、長方形をずらしてつないでいるため、斜めに見えます。
 しかしこの場合は、一番上の棒と一番下の棒を同時に見ると、4つの棒は垂直線上に並んでいることが楽に実感できます。
 たとえば一番左の列の、上と下の棒を同時に見ると、一列目は垂直に見えます。
 同じように二列目の上と下の棒を見れば、二列目は垂直に見えるといった具合です。

 一番上の棒と一番下の棒に同時に注意を向けてみるのは、距離が離れているので、視幅が狭いと難しいかもしれません。
 この場合上と下の棒を同時に見ようとして、目を見開いてみようとしがちですが、目をことさら見開かなくても、意識を同時に一番上としたの棒に向けてみれば、4本の棒は垂直に並んで見えます。
 また上下の棒を見るのでなく、真ん中にある四つの点二注意を向けてみていると、黒棒はどの列も垂直に見えるようになります。

 右側の図は構成が単純なので、錯視の度合いがやや弱いのですが、、左側の図形になると錯視の度合いがより強く、垂直に見えるにはより強い視線のコントロール力が必要です。
 たとえば一番左の列の、一番上と下の黒い棒を同時に注視しようとしても、視線がスリップしてしまいがちで、二つの黒い棒にのみ注意を向けるのが困難です。
 そのためほかの列の要素が目に入ってしまい、垂直に見えず斜めに見えてしまったりします。
 そこで、上から順に4本の黒棒をしっかり見つめていきます。
 そのあと一番上の黒棒と下の黒棒を同時に注視すれば、全体は垂直に見えるようになります。
 同じように二番目の列、三番目の列について見ていくと、それぞれの列は垂直に見えるようになります。
 選択的注意によって錯視が消えるのです。
 
 こんなことをしてなんになるかというと、上下の視幅を広げることができ、人目で注視できる文字数が多くなります。
 そうすると、認識視野が広げられ、楽に読み取れる文字数が多くなるので、文章を読み取るときのストレスが少なくなります。
 この場合も中央の4つの点に視線を向けて見ていると、灰色の部分が前面に出てきて見え、緋色の枠が黒と白の縞模様の上にかぶさっているよう見えます。
 このとき、灰色の縦の帯が上下同じ幅で垂直に見えますが、それは間接的に黒と白の縞の棒がすべて垂直に見えていることになります。


注視する能力

2008-11-18 23:19:07 | 注意と視野

 A図は正方形なのですが、全体に右上のほうに引っ張られた感じで、ゆがんで見えます。
 正方形だといわれても、見た目では納得できませんから、定規などをあてがってみると境界線がすべて水平あるいは垂直ですから、正方形であることがわかります。
 この図形はチェッカー盤のような市松模様のなかに、黒い正方形のなかには小さな白い正方形が、白い正方形のなかには小さな黒い正方形が二つずつ配置されています。
 チェッカー盤のような市松模様は、A図のようにゆがんでは見えず、正方形に見えるのですから、A図がゆがんで見えるのは、中に配置された小さな正方形が原因だと考えられます。

 ところが、A図の黒い部分を黄色に塗り替えると、B図になるのですが、こちらのほうはゆがみが少なくなり、ほぼ正方形に見えます。
 そうすると、中に小さな正方形が配置されればゆがんで見えるということではないとも考えられます。
 小さな正方形が配置されなければ、ゆがんで見えないけれども、色が黄色のように薄い色ならば、小さな正方形が配置されていてもゆがんで見えないのです。
 ようするに、ゆがんで見えるのは一つの原因によるのではなく、複合的な原因によるのです。
 
 ところで、A図は右上にゆがめられて見えるというだけでなく、視線を向けると動いて見えます。
 何気なく見ていると、図形が動くのでそれにつられて視線も動いてしまいます。
 実際は、図形が動くわけではないので、視線が動いてしまうために図形が動いているように見えるのかもしれません。
 ということであれば、視線を動かさなければ図形は動いて見えるということはないということになります。
 そこでA図を直接見るのではなく、B図のほうを眺めてみます。
 A図のほうに視線を向けなければ、A図は動いて見えるということはありません。
 
 B図を見ているときは、A図は周辺視野にあるのですが、周辺視野にあるものは細かくは見えないのですが、動きは見えます。
 もしA図が実際に動くのであれば、図柄はハッキリ見えなくても、動きは感知されるはずです。
 ところが、周辺視野にあるA図が動いては見えないのですから、A図に視線を向けたときに動いて見えるのは、見ているときに視線が動いてしまうということです。

 そこでA図の一番上の行の三つの黒い正方形をひとつずつ順番に注視していき、最後に三つの黒い正方形を同時に注視するようにします。
 そうすると図形はとまって見えるだけでなく、三つの正方形は水平に見えるようになります。
 同じように二行目についても、ゆっくり順番に注視していき、最後に三つの黒い正方形を同時に注視すると、三つの正方形は水平に見え、図形は静止して見えます・
 視線をコントロールできないと、図形が動いてしまい、三つの正方形は右上がりに見えてしまいます。
 これは横方向だけでなく、縦方向にもでき視線コントロール力が向上すれば、正方形のたての並びが垂直に見えるようになります。
 


注意を向けてみる範囲2

2008-11-15 22:47:17 | 注意と視野

 図Bは図Aの外側の4つの円の外側部分を除いたもので、図Cのほうは逆に内側部分を除いたものです。
 中心の円はAよりBのほうが大きく見え、CもBより小さく見え、Aと同じに見えます。
 これは心理学者の盛永四郎が示したもので、中心円の大きさの見え方を決めるのは、中心円に近い図形要素ではなく、中心円から離れた部分であると説明しています。
 AとCは大きな円の外側部分があるという点が共通で、その結果中心円がBの場合よりも小さく見えるので、中心円を小さく見せる原因が外側だとする説明は説得力があります。

 通常はA図の下にある小さな円に囲まれた円を示し、大きな円に囲まれた中心円のほうが小さく見えるのは、囲んでいる円との対比効果によるという説明がされています。
 盛永説は、対比効果を否定しているのですが、なぜ中心円から離れた部分の影響を受けているかは説明してはいません。
 また、中心円に近接する図形が影響力があるのかどうかもわかりません。

 実は、A図やC図を見るときと、B図を見るときとでは見ている範囲(注視の範囲)の広さが違います。
 写真機の原理と同じで、狭い範囲を見ようとするときは、目が少しズームアップするので、B図の中心円のほうが大きく見えるのです。
 したがって、B図の場合は近接する部分は円形ではなく、単に円弧に過ぎないのですが注視の範囲を狭めているので、中心円をやや大きく見せる効果があるのです。
 A図の左下の図のように小さな円が近接していれば、こちらのほうが大きく見えるのは対比効果によるのだという説明がもっともらしく聞こえます。
 ところがB図のように円形でなくても、中心円が大きく見えるのですから、対比効果でないということは明らかです。
 もし対比効果だというのなら。B図の場合は近接している図形要素は、大きな円の内側部分ですから、中心円はやはり小さく見えるはずです。
 
 注視する範囲が狭められたほうが、やや大きく見えるということは、下の文字列を見てもわかります。
 この場合中ほどの「ERTY」という部分を四角で囲んでいるのですが、囲まれた字のほうは、囲まれていない部分よりもやや大きく見えます。
 四角で囲んでいるから目立つというだけではなく、目が四角で囲まれた場合に注意を絞り込もうとするため、狭い部分に注意が絞られて、文字自体もやや大きく見えるのです。
 文字列全体を見るときよりも、四角で囲まれた部分を見ようとすると、四角で囲まれた部分はレンズを通してみたように、浮き上がってやや大きく見えさえするのです。

 


注意を向けてみる範囲

2008-11-13 22:34:43 | 注意と視野

 a図で小さな円に囲まれている円は、b図の大きな円に囲まれている円と同じ大きさなのですが、a図の円のほうが大きく見えます。
 心理学では、a図の円のほうが大きく見えるのは対比効果によるという風に説明されているようです。
 a図では小さい円に囲まれているからそれとの比較で大きく見え、b図では大きな円に囲まれているのでそれとの比較で小さく見えるということのようです。
 そう説明されるとなんとなく納得した気分になりますが、釈然としない感じもします。
 なぜかといえば、二つの円を囲んでいる円の大きさは、a図とb図とでは大きな開きがあるのですが、中心の円の大きさはそれほど違っているようには見えません。
 対比効果というからには、もっと違いがあってもよさそうな感じがするからです。

 ところで、a図の円を見るときは、とうぜん円に注意を向けてみているのですが、このときは注意を向けてみる範囲が狭くなっています。
 そこで単に円に注意を向けて見るのではなく、円を囲んでいる四角い枠に注意を向けて見るとどうでしょうか。
 まわりの四角い枠あるいは四隅の小さな四角に注意を向けて見ると。真ん中の円は先ほどより小さく見えます。
 そこで再び真ん中の円にもっぱら注意を向けて見ると。元のようにやや大きく見えます。
 つまり同じ円を見るにしても、注意の範囲を狭くしてみるときと、範囲を広げてみたときとでは大きさが違って見えるのです。
 ちょうど写真を撮るとき、狭い範囲をとろうとするときはズームアップするようなもので、見る範囲が異なれば同じものが違った大きさに見えるのです。

 b図のほうは取り囲んでいる円が大きいため、図全体が大きくなっていますから、ちょうどa図の四角形を意識的に見た場合と同じで、注意を向けてみる範囲が自然に広げられています。
 そのため真ん中の円はa図をまわりの四角形にも注意を向けてみた場合と同じくらいの大きさに見えます。
 つまりa図の円の法が大きく見えたのは、囲んでいる円が小さいということよりも、狭い範囲に注意を向けて見ていたからだという風に考えられます。
 ですから逆に、b図の真ん中の円に注意を絞り込んで見ていると、b図全体を見ていたときよりも大きく見えてきます。

 ラマチャンドランという心理学者は、a図とb図の中心の円を指でつまもうとすると、指の構えはaの場合もbの場合も同じ大きさだということを確かめて、目では違った大きさに見えても手指のほうは錯覚しないで、両方同じ大きさということを感知しているとしています。
 しかし上の実験でわかるとおり、同じ円形でも注意を向ける範囲で大きさが違って見えるのですから、目が錯覚しているとは言えないのです。
 円をつまもうとして指を構えるときは、a図の場合もb図の場合も中心の円に注意を向けているので、そのときはa図の場合もb図の場合も同じ大きさに見え、とうぜん指の構えも同じになるのです。

 またa図とb図の中心の円を別々に見るのでなく、両方の目で同時に見るのではなく、同時に見ても、両方の円が同じ大きさであることは実感できます。
 二つの中心円を同時に見るという場合は、注意を向けてみる範囲は同じですから、同じ大きさに見えるのは当然です。
 対比効果という説明は、説明の言葉自体が説得力を持ったために普及してしまったものなのです。


全体的に見る能力

2008-11-11 23:12:56 | 視角能力

 図Aと図Cを見比べると、水平の軸線はAのほうが短く見えます。
 よく紹介されるミュラー.リヤー錯視と呼ばれるもので、実際には二つの軸線は同じ長さです。
 同じ長さなのだということがわかっていても、見比べてみるとやはりA図の軸線のほうが短く見えます。
 ほんとうに同じ長さなのかどうかは、物差しをあてがってみればわかるのですが、目で見ていては納得できないかもしれません。
 
 B図はAとCをあわせた図形ですが、見方を変えると、A図とCzuha B図の中に埋め込まれています。
 B図を何気なく見ているときは、このなかにA図やC図画埋め込まれているということに気がつかないかもしれませんが、注意をしてみれば気がつくはずです。
 とくにA図のほうは中心に目を向ければ目に入るので気がつきやすくなっています。
 C図のほうは左右両側に注意を向けなければならず、その際に余分の線も見えてしまうので、気がつきにくくなっています。
 この場合aという6個の記号に注意を向けて見ると、A図とともにB図に埋め込まれたA図と同じ図形が見えます。
 また外側のbという6個の記号に注意を向けて見ると、C図とともに、B図に埋め込まれたC図と同じ図形が見えます。
 
 そうすると記号aをみたときは、B図の横の軸線はA図の軸線と同じ長さに見えたわけであり、記号bを見たときは、B図の軸線はC図の軸線と同じ長さに見えたわけです。
 したがってA図の軸線と、C図の軸線は同じ長さであることを、気がつかないうちに実感していることになります。
 それでは意識的にA図の軸線と、B図の軸線を比べてみればどうかというと、記号aに注意を向けたまま二つの軸線を見比べると、二本の軸線が同じ長さだと実感できます。
 同じように記号bに注意を向けたまま、B図の軸線とC図の軸線とを見比べれば、二本の軸線は同じ長さだと実感できます。
 つまり、意識的に見比べているのにA図の軸線とC図の軸線が同じ長さだということが確かめられいるのです。
 
 B図のなかに埋め込まれているC図を見るには、記号bに注意を向け、aを無視することができればよいのですが、これが結構難しい課題です。
 bは左右に離れているので、両サイドに注意を同時に向けるのは困難で、また内側のaはどうしても視野の中に入ってきますから、無視するのが困難です。
 したがってある程度の視野の広さと、離れたところに注意を向ける能力が必要です。
 視野を広げて全体的な見方のなかで図形を比較する能力が要求されるのです。
 B図を見るとき、4つのbに注意を向けてみて、C図と同じ図形を見ることができたら、こんどはそのままaにも注意を向ければ、図Aが埋め込まれているのも見えてきますから、そうすると3本の軸線が見えて、それらが同じ長さに見えるようになります。

 図Aと図Cを直接比べるときも、軸線のみに注意を向けずに、4つの記号bと4つの記号aに注意を向けて全体的な見方をすれば、二つの軸線は同じ長さに見えてきます。
 幼児と高齢者がこの図の錯視量が多いというのは視野が狭く、全体的な見方が難しいという理由によるのではないかと考えられるのです。


視線のコントロール能力

2008-11-08 23:24:25 | 視角能力

 図Aでは、左側の図形の中に、右側の六角形と同じ形が埋め込まれているのですが、どのように埋め込まれているかを発見する問題です。
 埋め込まれている場所は狭いので、簡単に発見できそうなのですが、輪郭線がハッキリ独立しているわけではないので、すぐにはわかりません。
 輪郭線が他の線の中にまぎれて埋没しているので、どの部分が輪郭線になっているのか、自然に見ただけではわからないのです。
 
 左側の図形では、平行四辺形に対して、斜めに切る線が7本ありますが、真ん中の一番長い線から左へ2番目の線と、右へ二番目の線で平行四辺形を切ると、右の六角形と同じ形になります。
 このように答えがわかっても、実際にA図を見るとほかの線が妨害刺激となって、六角形を図の中から分別して見ることはかなり困難です。
 真ん中の斜めの線と、そこから左右2番目2本の斜めの線、この3本の線と平行四辺形との6つの交点が六角形をつくっています。
 したがってこの6個の交点を意識して見れば6角形が見えてくるのですが、紛らわしい点がそばにあるので見にくくなっています。
 6つの交点をひとつづつ、順にゆっくり見ていけばよいのですが、視線をコントロールする力が弱いと、ついほかのところに視線が逸れて形がわからなくなってしまいます。
 また視線を順に移動したとき、前の点は周辺視野の中に入っていて、見えはするのですが忘れてしまう場合があります。
 ゆっくり、繰り返して交点を順に見ていけば、視線がコントロールできるようになり、、記憶も固定されて、六角形が見えるようになります。

 B図では、真ん中の横線は水平線なのですが、右下がりに傾いて見えます。
 この場合、横線の上にある黒い四角形は、すべて同じ大きさの四角形なので、四角形の下辺に接している横線は水平です。
 そのようにアタマでは理解していても、実際に図を見るとやはり横線は右肩下がりに見えます。
 そこで上下の接している二つの黒い四角形を左から順に一秒ずつ見ていきます。
 同じ大きさの図形を見ていくので、上下の真ん中の線は水平に見えるようになります。
 一組ずつきちんと視線を向けて見ていけば、横線が水平に見えるのですが、視線をふらつかせてしまうと、横線が斜めに見えてしまったりします。
 つまり、きちんと視線をコントロールして見ていっていけたかどうかは、真ん中の横線が水平に見えたかどうかで判定できるのです。

 この場合は図の真ん中、つまり上の黒い四角の三番目と四番目の間の白い部分に視線を向け、意識を集中してみていると、真ん中の横線は水平に見えるようになります。
 集中力が弱く、つい別の部分に視線が動いたりすると、横線は傾いて見えてしまいますから、視線を真ん中に集中できたかどうかは、横線が水平に見えるかどうかで判定できます。
 また一番左の四角形の組と、一番右側の四角形の組とを同時に注意を向けて見ると横線は水平線に見えます。
 このように錯視図形は視線のコントロール能力を上げる練習に使えると同時に、コントロール能力を判定する物差しにもなります。