60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

注意不足と注意の抑制が同じような結果に

2006-10-09 22:12:23 | 視角能力

 図はティチェナー(エビングハウス)の錯視図ですが、左の円のほうが右の円より大きく見えます。
 この場合、子供と高齢者は錯視の度合いが低く、青壮年のほうが錯視の度合いが高いということになっています。
 子供や老人のほうが錯視量が多いというのなら、視覚の未発達と老化と結び付けて理解しやすいのですが、逆だというのですからハテナと思うのではないでしょうか。
 
 まずどのような見方をすると二つの円が同じように見えるかを試してみます。
 左の円に注意を集中して見ると、周辺視野に見える右側の円は同じ大きさに見えます。
 同じように右の円に注意を集中してみた場合も、周辺視野に見える左の円は同じ大きさに見えますから、結局周りの円に注意を向けなければ、囲まれた二つの円は同じ大きさに見えるのです。
 ということは左右二つの円に同時に注意を向けてみれば同じ大きさに見えるはずで、事実二つの円を同時視すれば同じ大きさに見えます。
 また左の円を注視してから、すぐ右の円に視線を移して見ればやはり同じ大きさに見えます。
 
 それではどういう場合に左の円のほうが大きく見えるのでしょうか。
 普通に左の円を見るとき周りの小さな円も同時に見えますが、右の円を見るときも周りの大きな円も見えます。
 視野が狭いと周りの円への注意がほとんど向けられないので、周りの円との比較が行われにくくなります。
 回りの円と比較をすれば左の円は相対的に大きく見え、右の円は相対的に小さく見えます。
 つまり、周りの円が視野に入り注意を向けると、左の円が大きく右の円が小さく見えるというわけです。
 ためしに右側の円と周りの大きな円を見比べてから左の円を見ると、左の円のほうがはっきりと大きく見えます。

 したがって青壮年のほうが視野が広いので、周りの円に注意が向き比較をするので錯視が生ずるのではないかと考えられるのです。
 ところが二つの円を同時に見る場合はさらに視野を広げていますから、視野が広いかどうかが決め手なのではなく、注意の向け方が決めてなのです。
 周りの円への注意を抑制することによっても錯視は少なくなりますし、周りの円へ注意が及ばない場合も錯視は少なくなるのです。
 視覚能力が優れている場合と、未発達の場合とが同じような結果になるということもあるのです。

 心理学のデータは「どのように見えるか」という観点からとっていますが、本当はどのような見方で見ているかということも考慮に入れる必要があるのです。
 運動を例に取れば走るスピードを単純に比較して、タイムの良いほうを走力があるというようなもので、走法を問題にしないようなものです。