年をとると人の言葉が聞き取りにくくなりますが、これは聴力だけの問題ではありません。
聴力が落ちて言葉が聞き取りにくいということのほかに、話のスピードについていけず、話が理解できない部分が出てくるという面があります。
図はD.Cパーク「認知のエイジング」からのもので、音声を通常の話速の約二倍にした場合の理解度についての成績の低下度を調べたものです。
高齢者は若者に比べ高齢者のほうが話速が早くなった場合(分即165語→300語)理解度が大きく落ちます。
言葉が速くなると聞き取りにくくなるわけですが、単語と単語の間に無音の空白を入れて修復するとどちらの場合も成績が向上します。
この場合空白を入れる場所を文節や文章の終わりに入れる統語修復のほうが、ランダムに入れた場合より成績は向上しています。
単語の発音の速さが同じでも、文節や文の終わりなど、意味のまとまりに対応したところで空白を入れて、区切りを明らかにすれば理解しやすくなるので再生成績が上がるのです。
音声のスピードが速くても、意味のまとまりに応じて適当な区切りを入れて、処理時間を与えられれば、理解しやすいということなのです。
つまり文章の意味処理にある程度の時間が必要で、その時間は文節や文の終わりなど意味の区切りの場所に取れば意味が理解しやすいということです。
普通に理解できるスピードというのは、意味処理をする時間をとっても追いついていけるスピードです(話が難しければ処理時間が長くなり追いつけなくなりますが)。
高齢者に話をするときは、単にゆっくり話せばわかりやすくなるというのではなく、意味のまとまりごとに間を入れることが重要ですが、高齢者サイドではなるべく速い音声スピードに慣れようとする努力が必要です。
より速いスピードに慣れれば、意味処理をする時間を取りやすくなるので、意味がわかりやすくなり、話が聞き取りやすく感じるようになります。
速聴の効果というのは、単に速い音声スピードで聞き取れるということだけでなく、意味処理をする時間を余分に得られることで理解力の向上がはかれるという点にあるのです。。