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図は国際電気通信基礎技術研究所(ATR)が、つい最近、図形や文字を見たときの人間の脳活動を測定してコンピューターで画面に再現した様子を示しているものです。
20代と30代の男性二人に図形やアルファベットなどを見せ、大脳の視覚野の血流量の変化をMRIで計測し、脳の活動パターンから画像を解読するプログラムによって、元の文字や図形を再現したということです。
被験者に見せたのは白黒の画像で、被験者が画像を見てから4秒後にほぼ原画に近い画像をコンピューターで再現しています。
現在の段階ではごく単純な画像の再現に成功しているだけですが、かなりハッキリした画像です。
新聞によっては、見ているままの状態を動画にすることにも成功し、将来はカラー化も可能だというふうに報じています。
カラー化はともかく、動画にすることにも成功したというのは紛らわしい表現です。
MRIは時間の分解能が低いので、速い時間変化にはついていけないはずですから、動いているものを見てその状態を再現するということは無理だと考えられるからです。
したがって別の報道記事では、音楽の場合は時間的な変化を追う必要があるので、脳活動の測定が難しいと伝えています。
これはもっともなハナシで、たいていの人は視覚イメージよりも聴覚イメージのほうがハッキリしていて、聴覚イメージを測定できるなら、その方が意思の伝達には都合がよいからです。
たとえば「山のあなたの空遠く」という語句を、文字イメージとして思い浮かべるよりも、音声イメージとして思い浮かべるほうが楽で、ハッキリしています。
音声イメージなら男声でも女声でも、子供の声でもさらには他人の声色でもイメージできるのに、文字では楷書、行書、草書その他の字体で自由自在に思い浮かべるというわけにはなかなか行きません。
漢字などで複雑なものになると、視覚イメージでは記憶しきれずに、空書のように手書きのときの運動感覚の記憶に頼るという場合すらあります。
新聞記事には、将来は夢やさらには妄想まで視覚イメージを画像化できるかもしれないというようなことが書いてありました。
睡眠中に夢を見ているときや、空想をしているときにも視覚野が活動しているということから、実際に目で見ていなくても視覚野の活動をイメージ画像化することができると予想しているわけです。
しかし実際に見ている場合は視覚イメージはハッキリしていますが、空想とか夢ということになると、個人差が大きく、なかにはぼんやりとしたイメージしか湧かないだけでなく、まったくイメージが形成されないという人もいます。
高齢者の場合には視力の衰えとともに、イメージ力も低下してきて、イメージ力も低下しているという場合があります。
口で伝達する能力が失われても、目が見えれば視覚的な想像をMRIなどで、画像化することで意思を汲み取ることができるようにと期待されるのですが、高齢者の場合は、イメージ力自体が衰退している可能性が高いので難しい問題です。
そこで、文字表を見せて、見ている文字を画像化すればよいというふうにも考えつきますが、この場合は視線の向いている先を測定する装置があるので、高価なMRIを使わなくても間に合ってしまいます。
高齢者にとっての課題は、むしろ視覚イメージ力を保持あるいは向上させることなのです。
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