60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

心理的な説明と因果関係の説明

2006-10-24 22:51:15 | 視角能力

 図Aでは左の同心円の外円は右の円と同じ大きさなのに少し小さく見えます。
 また内円のほうは下の円と同じ大きさなのに少し大きく見えます。
 心理学ではこれを同化効果と呼んでいます。
 同心円の内側の円は外側の円の影響で大きく見え、外側の円は内側の円の影響で小さく見えるので、お互いに同化していると解釈しているわけです。
 このような現象は円でなくてもおきるということはB図を見れば分かります。
 左にある内側の正方形は少し大きく見え、外側の正方形はやや小さく見えます。
 やはりこれも同化効果の一種だと納得するでしょうが、同化効果という表現での説明には引っかかるものがあります。
 同化というのは心理学的あるいは比喩的な表現で具体性がありません。

 たとえばC図では内側の正方形の二辺だけ(つまり二本線)を描いてあります。
 左の正方形の場合、内側の線に外側の正方形の辺が同化しようとするなら、この正方形は上下に縮んで横長に見えるはずですが、逆に縦長に見えます。
 右の正方形の場合は左右に縮んで縦長になるはずが、逆に横長に見えます。
 内側の二本の線に外側の辺が近寄って見えるのではなく、二本の線に注意が行きその方向に注視範囲が広がるのです。

 これは内側の図形が線でなくて小さな円にしたD図のような場合でも同じです。
 左側の図形は縦長に見え、右側の図形は横長に見え、さらに円が外側に出ればよりはっきりと縦長と横長に見えます。
 つまり新しい刺激物が描かれればそちらに注意が向いて、注視範囲が変わるのです。
 こうしてみると正方形の近くに描かれた線や円の刺激が注意を引き、注意の方向をきめるので見え方が変わるのだという事が分かります。
 
 同心円や同心正方形の場合は、刺激図形が相似形なのでいかにも同化しているという表現がふさわしく思えるのですが、内側や外側に相似形でない刺激を描き加えても同じ効果が得られるので、同化というのは原因ではないことが分かります。
 表現によって心理的に納得させるというのでは、因果関係の説明をしたということにはならないのです。