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サルには類推が難しい

2006-10-17 22:21:59 | アナログとデジタル

 A.パスパレーとE.K.ミラーの実験でサルに2枚の色板を見せ、同じ色ならレバーを引かせる訓練をします。
 最初は赤、青、黄の三色のカードを使って訓練して、サルが十分訓練され、正解を出せるようになったらこんどは別の色を使ってテストをします。
 そうするとサルはどうしたらいいか分からなくなったそうです。
 この結果、サルは「色が同じならレバーを引く」ということが課題なのだとは理解していなかったと解釈されたのです。
 つまりサルは「赤と赤」「青と青」「緑と緑」という個別のケースを覚えて、そのときレバーを引くことを覚えていただけだったというのです。
 赤、青、緑の三色でやった訓練から類推して茶、黒、黄のときでも同じ色ならレバーを引くという応用が利かなかったのです。
 人間ならこどもでも同じ色ならレバーを引くんだということが簡単に分かりますが、サルは前頭葉が未発達なので、「色あわせ」という「大きな枠組み」を理解できなかったというのです。

 サルは人間に比べれば前頭葉が小さく、抽象的なルールの理解とか、状況の変化に応じた頭の切り替えは難しいのでしょうが、このテストでそういうふうに結論付けるのはサルに対し不公平です。
 サルは言葉が分からないので、あらかじめ言葉で指示は出来ません。
 最初に赤、青、黄の三色のカードで訓練する場合も、サルはただ二枚のカードを示され、同じ色の場合にたまたまレバーを引いたら報酬を与えられるという試行錯誤が繰り返されただけです。
 どーやら「赤と赤」「青と青」「緑と緑」の場合にレバーを押せばよいということを覚えた後、別の色のカードを示されるのです。

 人間相手なら「さてこんどはどれが正解でしょう」とか何とかテストが変わることが伝えられるのですが、何の説明もなければサルにしてみればとまどうでしょう。
 サルは人間のようにテストに慣れているわけではないので、前の訓練とルールが同じなのだからできるはずだと言われてもそうはいかないのです。
 色が変わってもルールは同じだから分かるはずだというのは、テストをするほうの理屈で、されるほうには分かるとは限らないのです。
 
 訓練の手続きとしては別の色でも試行錯誤で、同じ色なら正解という訓練をして、色が変わってもルールとしては同じだという訓練をすべきなのです。
 「色が変わってもルールは同じ」ということを何回やっても覚えられないということであれば、そこではじめてサルは規則の規則つまり一般原理が理解できないといえるのです。
 人間の場合は赤ん坊のときから言葉のシャワーを浴びて育っているので、このようなテストに順応できるようになっています。
 言葉を覚えれば、言葉の中にある原理とか考え方も同時に覚えているからです。
 サルと比較するのなら言葉を覚える前の幼児段階でテストするしかないのです。