2枚の色板を見せて、同じ色なら○、違う色なら×を選ぶように訓練してから、次に訓練のときとは違った色でテストをすると、サルは混乱してしまうといいます。
サルは訓練で同じ色の場合と違う色の場合を区別できるようになるのですが、色を変えるとまた新しい問題として最初から学習しなければならないのです。
ところが同じことをチンパンジーにやらせると、チンパンジーは色を変えても正しく出来るそうです。
理由は、チンパンジーの方がサルよりも前頭葉が発達しているからだと説明されそうですが、そうともいえない事実もあります。
同じようなテストをするとオームやカラスはやはりチンパンジーのように正解をするのだそうです。
それだけではなく、ドイツでの実験ではミツバチも違う刺激に対して同異の弁別ができたということですから、このテストに合格できるかどうかで前頭葉の発達を判断することは出来ないのです(アザラシもこのテストは合格するそうです)。
ハトの場合はサルと同じように、同異の弁別は訓練によってできるようになるのですが、刺激を変えるとまたあらためて訓練しなければ出来ないそうです。
そうするとハトはオームやカラスより賢くないと思いたくなるでしょうが、サルがカラスより賢くないとも思えないし、ミツバチの例もあるので単純に知能の差だとはいえません。
このテストの意味は人間が考えたもので、「同じ」とか「違う」ということが具体的に分かるだけでなく抽象概念として理解できるかどうかを確かめようとしたものです。
二つの色が同じとか違うとかいう事は、どんな動物でも見分けられます。
サルにせよハトにせよ訓練を受けなくても、二つの色が同じかどうかぐらいはわかるはずです。
訓練されて身につくのは、特定の色の組み合わせのときに特定の反応をすれば報酬が得られることに対する理解です。
その後、新しい色の組み合わせを示されたとき、同じ色だということが分かっても、前に報酬を受けた色とは違うので反応しないのです。
人間のほうは同じ性質のテストだと思っているのですが、サルやハトは人間の意図が分からないのです。
訓練によってサルやハトは、色の組み合わせの異同を判断できるようになるというのですが、正答率は100%になるのかといえばそうではなく90%前後ということです。
ということは同じ色かどうかは100%分かっているはずですから、報酬が得られるかどうか100%確信を持ってはいないということです。
同じ色の組み合わせに反応すれば報酬が得られるということは、自然現象ではなく人間の側の意志ですから、他の色になったときも報酬が得られるかは不定です。
他の色になっても同じように反応すれば報酬が得られるだろうと思うのは類推です。
人間の側はサルやハトが原理を理解しないと思うかもしれませんが、彼らの側からすれば類推の問題なのです。