心理学者のアイゼンクは老人と若者の情報処理の仕方の違いをテストをしています。
この実験では4種類の単語リストについてかっています。
第一群では各単語の文字数を数えさせ、第二群のときはおなじ音韻の単語を答えさせる。
第三群はの単語についてはふさわしい形容詞を言わせ、第四群では各単語で浮かぶイメージについてどの程度ハッキリしているか評定させる。
その後で各群の単語の再生テストをしたときの成績が上の図です。
この結果で見ると、単語の文字数とか音韻とかいった形式的な情報処理をしたときは老人も若者も記憶量は変わりません。
単語の意味にかかわる処理をしたときは、若者のほうが再生率が高くなっていて、老人のほうが成績が悪くなっています。
この結果は普通に考えられていることとはちょっと違うようです。
年をとると無意味言葉などの記憶は不得意になるから若者に劣り、意味の関連を持った記憶なら若者と同等であると普通は考えられているのではないでしょうか。
ところが実際は逆で、意味との関連による記憶は、無意味記憶より再生率は高いけれども、若者に比べれば劣るというのです。
言い換えると言葉の意味処理については年をとると衰える傾向があるということです。
別の実験では老人は言葉を思い出すとき、単語の出だしをヒントで与えられたほうが、同じような意味をヒントで与えられた場合より成績が良いそうです。
ところが若者は逆で意味のヒントのほうが音のヒントより成績が良いそうです。
そういわれてみれば単なる語呂合わせのダジャレを老人のほうが好んでいて、あまりダジャレを頻発するのでヒンシュクをかったりすることがあるようです。
ダジャレというのはどちらかといえば子供の言葉遊びのようですが、子供の場合は言葉の獲得過程でのものです。
老人の場合は言葉の獲得過程ではなく、言葉の意味の喪失過程というような感じです。
普通は言葉を意味なくしゃべるということは正常でないと考えられていますが、実際は意味なく覚えていたものも考えてみれば結構あります。
おまじないとか、歌の文句とか意味が分からず覚えていたものが結構あります。
「おもえばいととしこのとしつき」という卒業のときの歌詞の意味などたいていの人は知らないままです。
受験のとき2の平方根を「ひとよひとよに」と意味の裏づけなしで語呂で覚えていてきにもとめなかたと思います。
したがって文章を音読するというだけでは、意味に結びつくとは限らないので、としをとってからの読書は意味の把握を重視する必要があります。