60歳からの視覚能力

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子供と老人の見方が似ているのは

2006-10-07 22:27:58 | 視角能力

 図はポンゾの錯視図といわれるもので、同じ長さの二本の横線がありますが、上のほうが長く見えます。
 上のほうが長く見える理由は、一般的な説としては遠近法によるものとしています。
 斜めの線によって上のほうが遠くに感じるので、同じ長さに描かれているけれども本当はもっと長いと脳が解釈するというのです。
 本当にそんなふうに脳が解釈しているのかは疑問のあるところで、この説自体が解釈なので、「脳の解釈と解釈する」というこんぐらかった言い方になります。

 右の図はポンゾの錯視について年齢別の錯視量を調査したもので、10歳以下の子供と60歳以上の老人は錯視量が少ないという結果となっています。
 子供には同じ長さに見えてしまうというのは、遠近法説で説明できそうですが、老人については無理な感じがしますね。
 子供はまだ遠近法を知らない可能性があって、遠くにあるものは小さく描くなどと考えないから同じ長さに見えてしまうかもしれません。
 しかし60歳以上の老人が遠近法を知らないなどとは考えられないので、老人も子供のように同じ長さに見えてしまうということは説明できません。
 
 子供は遠近法を知らないけれども老人は知っている、それなのに両者は同じように錯視量が少ないとなれば、他の説明を探さねばなりません。
 
 二本の斜めの線は見方によっては、線路が遠くに延びているような奥行き感を感じさせます。
 その場合は上の線のほうが遠くに見えるので、実際に目の焦点が遠くにあわせられるので大きく見えます。
 ところが、この二本線は屋根の形とか山形に見えたりもするので、その場合は奥行き感は感じませんから遠近法的な見方は関係なくなります。
 この場合は上の線も下の線も同じ長さに見えるかというと、それは必ずしもそうとはいえないのです。
 
 二本の線は斜めの線の開いた距離と比べれば、上の場合はほぼ等しいのに、下の場合はかなり差があります。
 そのような比較をすれば、下の線は短く見えます。
 横線を見るとき両サイドの斜めの線との距離まで注意してみると、下の線は相対的に短く見えるのです。
 つまり単純に上下の横線を見比べるのでなく、両サイドの斜めの線との距離まで見ると上のほうが長く、下のほうが短く見えるのです。
 そこで子供と老人は狭い範囲しか見ないので錯視が少ないのだと考えられるのです。

 もし上下の線が同じ長さに見えたら、それぞれ視線を横に動かして両サイドの斜めの線を見ると下の線のほうが短く見えることが確かめられます。
 つまり、遠近法でなくとも錯視が生ずるのです。