左の図で文字ではなく文字の色を答えようとするとき、つい文字を読んでしまいそうになります。いわゆるストループ効果です。
そのため文字を読むときに比べ、答えるのに時間がかかったり、間違って文字を読んでしまったりします。
この課題を実行するとき脳の前頭葉が使われるということで、また前頭葉に問題のある人はこの問題の成績が悪いとかで、この問題を実行することが前頭葉を鍛えることになるというふうに考える人もいます。
この問題にはポイントが二つあって、ひとつはものの名前を言うより、文字を読むほうが自動化されていて速いので、色の名前より文字の読みのほうがさきにでてくるということです。
もうひとつは、簡単な問題でもスピードを上げて速くやろうとすると、前頭葉が活発に働くようになるということが知られています。
前頭葉を使う課題はそれこそいくらでもあるので、このような課題にとくに注目する理由はわかりません。
この課題を実行すれば前頭葉が能率的に鍛えられ、ほかのアタマを使う能力も向上するという期待があるのかもしれませんが、そういうことは確かめられていません。
繰り返し練習すれば、間違えずに早く答えることができるようになるかもしれませんが、だからといってほかの能力も向上するとは限りません。
どうせ前頭葉を使う作業をすうrというなら、新しい物事やことばを覚えたりするほうが有用な気がします。
右側の図は文字の配置がランダムで、しかもいろんな角度で表示されています。
こちらの場合は、文字の色を答えるとき、左の場合よりも戸惑いが少なく、文字を読んでしまうということもおきにくくなっています。
文字の大きさは同じになっていますが、逆さまになったり90度回転したものがあったりして、そうした文字は読みにくいので、自動的に読んでしまうということが少ないためです。
わざと読みにくくしてあるのだから、読みが遅れその結果文字の色を先に答え易いということなのですが、そんなことをする意味があるかと思われるでしょう。
アメリカの速読法の訓練の例を見ると、いろんな方法で文字を読みにくくして、文字を読み取らせようとしているのがあります。
綴りを逆さまにしたり、母音を抜いた文章や、単語の文字配列の一部を変えたりして、読みにくくしたものを読ませるのです。
これは単語や文章のすべてを正常な状態で見なくても、単語や文章の意味を理解できることを目指しているからです。
文章をすばやく読もうとすれば、単語や文字の細かい部分をすべて確認しなくても、部分的な情報から自動的に読み取る能力が必要となります。
速読などをしなくても、文章を理解するためには、あるていど文字や単語を自動的に読み取る能力が必要で、そのために長い教育期間が投じられています。
文字を自動的に読むという能力自体は、長い学習の結果得られたもので、その能力を抑えて、文字の色を答えるというような訓練をすることにどんな意義があるのか不思議ではあります。