真ん中の丸印に目を向け、両側の文字を読み取ろうとすると、上の場合は左側の二文字か三文字程度しか読み取れないのではないでしょうか。
右側の文字ならばひとつも読み取れないかもしれません。
上の場合は左側が新字体、右側が旧字体ですが、旧字体のほうは字形が複雑なため周辺視野では読み取りにくいためです。
読み取りにくいのは字体のせいではなく、左のほうが読み取りやすいのだという可能性も考えられます。
そこで、こんどは下の丸印に目を向けて見ると、今度は左側のほうが読み取りにくくなっています。
下のブロックでは左側が旧字体になっているので、やはり旧字体のほうがずっと読み取りにくいことがわかります。
つぎに左上の新字体のブロックの真ん中に視線を向けた状態で、このブロックの文字を読み取ろうとすると、内側の10文字ぐらいは読み取れ、人によっては、ほとんどの文字を読み取ることができるかもしれません。
これに対し右上の旧字体のブロックを同じ要領で見た場合、読み取れる文字数は半減します。
これは一つ一つの文字が読み取りにくいだけでなく、複雑な文字が密集するとよけいに読み取りにくくなるためです。
旧字体の文字を読むときは、ある程度字が大きくないと文字の読み取りに集中力が必要となるので、どうしても早く目が疲れます。
だいたい、老眼になると視力が衰えているだけでなく、文字が小さく見えるので旧字体で漢字が多い文章は読むのに苦労をします。
子供は複雑な字体でも、苦にせずに文字を覚えるというようなことを主張する人もいますが、旧字体のほうが新字体よりも覚えやすいというわけではありません。
旧字体で漢字を覚えたとしても、文字を読んだり書いたりするときは、より集中力を必要とし、活字でも字が小さければ、より目を酷使することになるので不利です。
若いときは目を酷使しても耐えられるかもしれませんが、年をとってくれば視力が衰えて、字がぼやけて見えるようになり、複雑な字は読み取りにくいので目を凝らしてしまい、目が疲れてしまいます。
文字の読み取りに注意とエネルギーを奪われてしまうと、文章の意味が理解しにくくなり、さらに疲れて文字も読み取りにくくなるという悪循環に陥ります。
審美的には旧字体のほうが好ましいという人もいますが、意味を伝える手段としては負担と犠牲が多いので厄介なものです。
漢字を瞬間的に表示して読み取らせるという実験で、百分の一秒以下、千分の一秒でも読み取れるという結果が得られたそうですが、どんな漢字を誰に読ませたのかがハッキリしないまま、千分の一秒でも読み取れるというハナシだけが伝えられているようです。
実際には複雑な字よりも簡単な字のほうが読み取りやすく、シッカリ覚えてなじんでいる漢字は、うろ覚えの漢字より読み取りやすいものです。
これは簡単な実験で確かめられることで、千分の一秒で読み取れるというのは、その漢字が記憶にシッカリ定着していることと、表示される大きさが十分に大きくて判別しやすいことが必要です。
漢字自体が神秘的な力を持っていて、カナやアルファベットより短い表示時間で読み取れるということではなく、漢字でもよく記憶されていれば瞬間的な表示でも読み取れるということなのです。