文字がハッキリ見える範囲は、30cmはなれたところから見た場合で2.5cm程度、日本語文字にして7文字程度です。
視角(偏心度)にして+-2.5度程度ですが、見え方はそばに刺激があるかどうかでずいぶん変わります。
左の図は注視点から離れたさまざまな場所に、アルファベットの文字を表示してみた場合の正解率をグラフにしたものです。
右側の白丸のグラフは文字をひとつだけ表示した場合で、2.5度ぐらいまでは100%の正解率で、中心から離れるにつれぼやけて見えるため正解率が落ちていく様子が見て取れます。
これに対し、左側の黒丸のグラフは、文字の左右に別の文字を同時に表示した場合ですが、正解率は極端に下がって、明視範囲の2.5度の処でも、正解率は40%以下に落ちてしまっています。
生理的にはハッキリ見えるはずのところでも、ハッキリ見えなくなってしまい正解率が40%以下にまで落ちてしまうのは、注意の問題です。
左右に近接して妨害刺激が表示されるため、どうしても注意が分散してしまい、ターゲットに十分な注意が配分されないためです。
文字を読むときは横書きなら左右に文字が並び、文字が一つづつ孤立して表示されるということはありません。
したがって一つ一つの文字に注意がいく場合は、一目で見て正確にわかる範囲は視角で+-2度以下の範囲になります。
漢字で同じことを確かめてみようというのが、右側の図です。
一番右の図は漢字が三文字表示されていますが、これは間に漢字を詰めれば七文字分です。
この場合まん中の「宏」という部分に視線を向けたまま、上の文字を見ると「建」という文字を読み取ることができます。
次に下の文字に注意を向けて見れば、「減」という文字も読み取ることができます。
アルファベットに比べれば、複雑に線の入り組んだ文字なのですが、何とか読み取ることができるのは明視野の範囲だからです。
ところが左側のように上下に漢字を並べてしまうと、まん中に視線を向けた状態では「建」も「減」も読み取ることは非常に難しくなります。
ひとつ内側の「衆」と「短」がかろうじて読み取り可能というふうに、読み取れる範囲が狭くなっていることがわかります。
まん中の例のように隣接する文字がひとつになっていれば、上下がはさまれている場合と比べると読み取りやすく、また隣接している文字が漢字でなくひらがなであれば読み取りやすくなります。
それにしても、文字の一つ一つを読み取ろうとすると、ハッキリと読み取れる範囲というのは極端に狭くなって4文字程度に下がるので、読取効率が悪く、眼も疲れます。
少なくとも文節単位では読み取れるようになれば、読み取れる範囲が広がり、、眼も疲れにくくなりますから、訓練したほうがよいでしょう。