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類推による説明

2008-12-30 22:26:24 | 視角と判断

 図Aでは、左側の縦線は外向きの<印にはさまれていて、右側は内向きの>印に挟まれている結果、左の縦線のほうが長く見えます。
 左側のほうが長く見える原因の説明として、左側は部屋の隅を連想させ、右側ワ建物の角を連想させるからだというのがあります。
 部屋の隅を連想させるというのは縦線の部分が引っ込んで置くにあるように見え、右側は建物の角を連想させるので、手前に突き出ているように見えるというのです。
 同じ長さであれば、引っ込んで置くに見えるものは長く見え、手前に突き出ているものは短く見えるので、左側の縦線の長さが長く見えるというわけです。

 平面図の上で同じ長さのものが、遠くにあるように見えれば長く見え、手前にあれば短く見えるというのは、B図のような例で確かめられます。
 B図では、斜めの二本の線が奥行きを感じさせるため、二つの水平の板は上のほうが遠くにあるように感じるので長く見え、したの不が近くにあるよう感じるので短く見えます。
 こうした例からすれば、A図で左側のほうが長く見えたのは、左側の縦線が奥まって感じられて長く見え、右側の縦線は手前に感じられて短く見えるのだという説明が正しいように見えます。
 ところがB図と同じ大きさの板をC図のように配置してみるとどうでしょうか。
 >と<の外向きの矢羽に挟まれた軸線が奥にあるように感じられ、<と>の内向きの矢羽に挟まれた軸線が手前にあるように感じられるとするならば、B図と同様に上の板のほうがしたの板よりも長く見えるはずです。
 
 C図で二つの板を見比べてみると、上のほうが長く見えると思いきや、そう見えないばかりか、逆に上のほうが短く見えます。
 矢羽の向きが遠近感を感じさせることで、間に挟まれた軸船の長さ違って見えるというならば、このようなことは起き得ないはずです。
 あるいはCの上の図のほうが奥にあるように感じられるけれども、何かほかの要因が働いて、奥行き感による見え方を打ち消して、見え方を逆転させてしまっているということも考えられるかもしれません。
 そうだとしてもB図とC図では見え方が逆転しているのですから、やばねが遠近感を感じさせるという説明は苦しいといわざるを得ません。
 
 A図で左側のほうが部屋の隅を連想させるので奥まって見えるとか、右側のほうが建物の角を連想させ、手前にあるように見えるというのは、形の類似からの類推です。
 実際に左の縦線が奥に見えるとか、右の縦線が手前に見えるというのではありません。
 もし、左側の縦線が奥まって見えるというのであれば、部屋の隅を連想させるとか、右側は建物の角を連想させるという必要はありません。
 理由がわからなくても、奥まって見えたり、手前にせり出しているように見えるのなら、
説明は要らないのです。
 実際は、そのような説明がなくても、左側が長く見え、右側が短く見えるのですが、部屋の隅が奥まって見えたり、建物の角が手前にせり出して見えるということから類推して、左側の縦線のほうが長く見えるとしているのです。
 つまりこの説明は、実際に確かめたものでなく、類推による説明にとどまっていたのです。

 矢羽に挟まれた軸線の長さが矢羽の向きによって違って見える原因は、遠近感によるものではなさそうだということは、D図のように片側だけを取り出して比較してみるとよくわかります。
 D図では水平な軸線は同じ長さなのですが、どうしても上の図の軸船のほうが長く見えます。
 この場合は矢羽が片側だけなので、部屋の隅を連想させたり建物の角を連想させるということはありません。
 それにもかかわらず、上の軸線のほうが下の軸線よりかなり長く感じられます。
 片側だけでかなり差があるように感じられるのですから、A図のように両側が示されればさらに長さの違いが感じられのです。
 心理学の説明は類推が多いのですが、実際に類推が当てはまるのかどうか確かめられる場合は、この場合のように確かめてみるべきなのです。


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