虻(あぶ)、蚋(ぶよ)などは読めなくても虫の一種だろうという見当をつけることが出来ます。
漢字の偏がものの分類を表していると考えるからですが、こうした推測はいつもうまくいくとは限りません。
蝦(えび)、蟹(かに)、蛸(たこ)などは虫ではないのに虫偏で文字がつくられたということは、大昔の中国人は虫の同類と考えていたのでしょう。
これらだけならともかく、ヘビ、マムシ、カエル、トカゲなど爬虫類や両生類もいっしょくたに虫類と考えていたとすると、現代の感覚とは相当なずれがあります。
ヘビなどはミミズなどと形が似ているので骨があるのに虫の親戚と思われたのかもしれませんが、現代の日本人の虫についてのイメージとは合いません。
不思議なのは貝類が貝偏ではなく虫偏になっていることです。
シジミ、ハマグリ、アワビなど現代のイメージでは虫に結びつかないのですが、蛎(かき)、栄螺(さざえ)、田螺(たにし)、蝸牛(かたつむり)と並べてみると、現代でもデンデンムシを虫とするイメージがあるので、貝も虫の一種とする感覚も一概におかしいとは言い切れません。
それでも日本人の感覚では貝類を虫と同類とは考えられなかったはずです。
中国と日本では接触する動物の種類がずいぶん違っていたので、分類の仕方が違っても当然なのですが、あえて文字はそのまま受け入れたのは、偏にそれほどこだわらなかったからでしょうか。
現代は昔に比べれば外国の生物も多く知られてきているので、かつてのような分類ではうまくとらえることが出来なくなっているので、本来なら漢字も変化させなければならないところです。
文字をむやみに変えるのは混乱の元なので、イメージ的にあわない漢字の名前はカタカナにでもして表示するしかないかもしれません。
大昔は知られていなかったペンギンとかペリカン、トナカイ、マンモスなどは無理に漢字表現しないでカタカナ表記で落ち着いているので、漢字イメージと異なる名前はカタカナ表記のほうが誤解を防ぐ意味でよいと思います。
漢字の構造と言葉の意味を厳密に一致させるのは現実的には無理になってきているので、本来こういう意味だという語源説にこだわるのであれば、現代に会わなくなった文字は、文字そのものを変更するか、カタカナ表記にすべきです。