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分類のなかの典型

2006-08-29 22:24:09 | 言葉とイメージ
 似顔絵を描くときは、描こうとする顔と平均顔と比べて、特徴的な部分を誇張するとうまく描けるるといわれています。
 平均顔から遠ざかっているように描いたほうが似ている感じがするというのです。
 ところが、平均顔というのは魅力的で好まれるという調査データがあり、多くの顔の平均であればあるほど魅力的だといいます。
 そうすると、せっかく本物に似た顔を描いたと思ったら、平均顔から遠ざかっているために、魅力的な顔から遠ざかった顔となってしまったということになりかねません。
 似顔絵を描いてもらった人からすれば、似てなくても魅力的な顔に描いてもらったほうがよいということにもなりかねません。
 だからといって、魅力的ではあるがあまり似てない顔を描けば、追従的になってしまうので、似ているようで似てない微妙なバランスで描くことになるのでしょうか。
 
 上の図でAはAグループの平均顔、BはBグループの平均顔ですが、Cは両グループ全体の平均顔です。
 Cは全体の平均顔ですから全体のどの顔ともある程度似ています。
 他の個々の顔よりも魅力的なので、全体を代表する典型的な顔だということも出来ます。
 ところがAグループだけをとってみると、CよりもAのほうが個々の顔に似ていますし、Aグループ全体を代表しているように見えます。
 同じように、Bグループについては、BのほうがCよりもBグループを代表しているように見えます。
 ということで、全体を何らかの基準で分類すれば、その平均は全体の平均よりもその分類のメンバーの代表として適切なのです。
 
 たとえばAグループが美人グループ、Bグループがその他のグループであるとした場合、Aグループの平均顔のAはBグループの平均顔のBよりも美人で、全体の平均顔のCよりも美人グループの代表として適切なので、Cよりも美人だということになります。
 多くの顔の平均のほうが少ない顔の平均より魅力的であるという説はここでは覆されるのです。
 平均顔が一番魅力的だといっても、魅力的なグループの典型にはやはり負けてしまうのです。
 人間はチンパンジーなどと違って、適切な分類を行ってその典型イメージを作るという能力を持っているのです。
 
 そうするとお客にも喜ばれる似顔絵画家というのは、漠然とした平均顔を土台にしてそこからのずれを特徴化して描くのではなく、まず土台の平均顔というのを魅力的な顔の平均から借用して、その上で描く顔の特徴を描き込むということになるのでしょう。
 絵の巧みな人はいろんなグループの平均顔というのをイメージとして持っていて、それを土台に個人の特徴を加えるという能力を持っているということです。
 銀行員なら銀行員の典型顔、力士なら力士の典型顔というイメージなど、さまざまな典型のイメージを持っていて、相手によって使い分けるという能力があるのがプロなのです。