60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

同音異義の擬態語

2006-08-06 21:58:15 | 言葉とイメージ

 日本語は同音異義のことばが多いので、音声だけではどの意味か理解できず、漢字を頭にイメージして理解するというように言われています。
「こうかい」と音声で聞いても「こうかい」という単語は「公開、更改、航海、後悔、公海、紅海、黄海、公会、香会」その他いくつもあるので、漢字を思い浮かべて適当する単語を選ぶというのです。
 日本語は視覚型多言語だとか、テレビ型言語などといわれるのは、このような説明がもっともらしく聞こえるからです。
 実際には、ことばを聞いたとき、いちいち読みが同じ単語をすべて頭に思い浮かべて、そこから該当する単語を選ぶというようなことはないでしょう。
 
 「こうかい」ということばを聞いて、すぐにたくさんの単語を思い浮かべられるのは、よほど特殊な人で、思い出した単語の中に必ず正解が含まれているとは限りませんし、どれが適当かを選ぼうとしたら時間がかかってしまいます。
 ちょうど書き取りの試験をやるようなもので、どんな字だったかいつも考えていたのでは参ってしまいます。
 読みを示して適当な漢字を入れよという問題で、意味が分かっても漢字が思い出せなかったり、間違った答えを書いたりするのですから、漢字のイメージが先に浮かぶという説は実感にはそぐわないものです。
 言語学者のようにことばの専門家ならそういうことがあるかもしれませんが、普通の人はそんなことは出来はしません。

 また、同音異義というのは漢字で表現されることばだけの問題ではありません。
 擬音語、擬態語のように漢字で表せず、カナでしか表せないことばでも、意味はひと通りではなく、いくつもの意味を持ったものがたくさんあります。
 たとえば、上の図の例では「からから」という場合でも10種以上の意味があり、ことばを聞いたときどの意味なのか判断しなければなりません。
 漢字がくっついていることばの場合は、漢字を頭に思い浮かべてそこから選ぶというような説明も考えられるでしょうが、擬態語の場合は文字は同じカナなので、文字を頭に思い浮かべるというような説明はできません。
 そうなれば音声を聞いたとき、文字でなく意味がいくつか思い浮かべられ、そのなかから適当なものを選ぶということになります。
 そうすると漢字のことばでも、文字をいくつか思い浮かべるのではなく、意味を思い浮かべてもよかったはずです。
 
 しかし、すべての意味を思い浮かべて、そこから適当なものを選び出すという試験問題のようなことをやっていたらとても時間がかかってしまいます。
 前後の単語とか話の流れから、適当する意味が半ば自動的に浮かび上がるということでなければ、とても会話など出来たものではありません。
 「かんかん」のように擬態語もあり、漢字熟語も蟻といった場合もあるということからすれば、音声を聞いて漢字を思い浮かべて意味を理解するというアクロバット的な方法はいくら日本人が頭がよくても一般的には無理です。