60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

言葉とイメージが合わない

2006-08-04 22:55:00 | 言葉とイメージ
 真田信治「方言の日本地図」によれば、むかし子供を泣き止ませるのに使った妖怪の名前は地方によっていろいろだそうです。
 東日本は主としてモー類の語形(モー、モーコなど)、中部から西日本はガゴ類(ガンゴ、ガガモなど)と分かれるそうです。
 関東のモモンガは江戸時代ごろからバケモノのとして有名になったのですが、具体的にどんなものかはたいていの人が知らなかったようです。
 モモンガといえばリスの仲間で、体調が15cm~20cmぐらいで、目が大きく可愛らしいので、現在ではペットとして人気があります。
 同じような形のムササビは40cmとやや大型で、夜樹の間を滑空するので、盗賊のふたつ名に使われたりしていますが、モモンガは小型でスゴみはありません。
 もともとムササビとモモンガは区別されていなかったのですが、妖怪としてのモモンガはムササビのイメージに言葉の響きの妖怪らしさがごちゃ混ぜになったようです。
 
 落語でも他人を化け物として罵るのにモモンガと言う例がありますが、モモンガというのはどんなものかという具体的なイメージはないようです。
 モモンガとムササビがいつから正式に分けて呼ばれたか分かりませんが、ムササビはムササビとして知られていたのですから、ある時期モモンガのほうが大きいような錯覚が生じたのかもしれません。
 実際のモモンガを見ていれば小さいし、バケモノとは思わなかったでしょうから、言葉の響きが独り歩きしてしまったのでしょう。
 夜行性ですからほとんどの人は見たことがないわけで、見たことがないので言葉の響きだけで妖怪だと思ってしまったのでしょう。
 
 現在でもモモンガといえば、バケモノと思っている人が多いようですが、もし実際の動物としてのモモンガを見ればイメージが崩れるでしょう。
 名は体を表すという言葉がありますが、モモンガの場合は当てはまりません。 
 アニメなどで、実在する動物のモモンガを差し置いて、妖怪らしいイメージが別に作られているのですから、ことばの感覚と視覚イメージは関係ありそうでないような、奇妙な現象です。
 ムササビのほうであれば、モモンガであれ中部地方の妖怪のガゴゼであれ、結びつきそうな感じもありますが、実際のモモンガは無理な感じなのです。