60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

擬態語が記憶に残る

2006-08-05 23:30:26 | 言葉とイメージ

 苧阪直行「感性の言葉を研究する」によると、文章の中に擬音語、擬態語が含まれた場合は、よりイメージが強化されて記憶に残りやすいといいます。
 たとえば
A「風が吹く」という文章と
B「風がヒュウヒュウ吹く」、
C「風が強く吹く」、
D[かわいた風が吹く]
 といったような文章を10種類ほど読ませて想起テストをしたとき、うえの図のように13週間もたった後では擬音語を含む文章の再認率が高く、イメージの評定でも生き生きとしていると評価されたといいます。
 
 擬音語、擬態語が含まれる文章が記憶に残りやすいのは、知識ではなく感性に訴える表現だからということらしいのですが、そうであれば擬音語や擬態語は発達のかなり早い段階に身についているということになります。
 ムシャムシャ、ピカピカ、ザアザアといった語は5歳ぐらいから大体正しく認識されていますが、テクテク、シクシク、ヒュウヒュウなどは五歳段階では50%程度、6歳になってから70%以上となっています。
ペラペラ、ギョロギョロなどは6才になっても40%以下、クスクス、キリキリ、ソワソワといった語では6歳でも20%以下で、学校にいき始めてから理解が進んでいくものと考えられています。

 擬音語、擬態語はかなり早い段階から理解されているものもあるようですが、小学校入学以降に多くが理解されるということは、社会経験による精神的発達に伴って言葉の経験が深まり、言語感覚が発達していく過程と平行しているということでしょう。
 単純に日本語を話せれば自然に分かるということでは必ずしもないのです。
 それでも擬態語表現が英語などよりはより感覚的なので、覚える負担が少なそうに見えるということはあります。
 
 たとえば歩くという表現について、日本語ではヨチヨチ、ノロノロ、トボトボ、ブラブラ、テクテク、ツカツカ、セカセカ、ノソノソ、ドタドタ、ヨボヨボ...といったものがありますが、対応する英単語では、totter,loiter,stagger,trudge,ramble,tramp,stride,bunte,lounge,stomp,dodder...といった具合で一つ一つ単語を覚えなければなりません。
 ヨチヨチとヨボヨボに対しtotterとdodderが対応する例などから英語の場合も感覚的に分かる場合もあるようにも見えますが、歩く表現であるとまでは感じ取れるわけではありません。
 日本語の場合は「歩く」という意味的な部分と、「よたよた」「よぼよぼ」というような感性的な部分を切り離しているのでよりイメージ化しやすく、覚えやすいような気がします。