考えるための道具箱

Thinking tool box

◎忘れてもらっちゃこまる。

2008-11-08 23:37:11 | ◎業


近頃、ダイレクト・レスポンス広告のコピーが注目を集めているけれど、いまやマーケットプレイスで50,000円近くの値段がついているこの本も忘れてはならない。オグルビーの『「売る」広告』。まさに売る広告のための最強の教科書。ケープルズの『ザ・コピーライティング』(=『効く広告』)ですら、神田監修にもかかわらず賛否両論があるくらいだから、なかなか理解してもらえないのかもしれないが、モノが売れなければ企業は潰れる時代に、広告はエンターテイメントではない、というオグルビーの言葉に真摯に耳を傾けたい。

「ボディ・コピー:誰もボディ・コピーを、読まない」。これは本当だろうか、嘘だろうか?それは次の2つのこと次第だ。まず第1は広告されている商品に、どれだけ多くの人が興味を惹かれるか、ということである。多くの女性は、食料品についてのコピーは読むだろうが、葉巻についてのコピーを読むことはほとんどないだろう。第2に、どれだけ多くの人があなたのヘッドラインやイラストレーションの力で広告に引き込まれるか、ということである。
雑誌広告におけるボディ・コピーの平均的なリーダーシップは約5%である。これは大きな数字に思えないかもしれないが、「リーダーズ・ダイジェスト」誌の読者の5%と言えば、150万の男性あるいは女性に相当する。
しかし、読者をスタジアムに集まった群衆であるかのように扱ってはならない。人はあなたのコピーを読むときは個人個人なのだから。クライアントのために、彼ら1人1人に手紙を書いていると考えることだ。1人の人間として、他の1人の人間に手紙を書く--それは2人称単数である。」(P80)

「短いコピーか、長いコピーか?:私の経験によると、多くの製品について、長いコピーの方が短いコピーよりも、販売する力が大きい。
1.故ルイス・エンゲルは、メリル・リンチ社のために6,450語の広告を書いた。この広告は「ニューヨーク・タイムス」に1回掲載されただけで、1万のレスポンスがあった。しかも、クーポンなしで。
2.クロード・ホプキンスはシュリッツ・ビールの広告で、コピーをびっしり5ページも書いた。2,3ヶ月経つと、シュリッツは業界5位から№1にとなっていた。……」(P80)

この考え方は、もう通用しないのだろうか?
たとえば、コンサルと呼ばれるような人が、コミュニケーションやデザインについてまったくの門外漢にもかかわらず、したり顔でのたまうかもしれない。「長いコピーなんか消費者は読まない。だから、取っ払ってしまおう」と。

これは仕方のない話だ。なぜなら、彼はこの広告やカタログのターゲットでもないし、商品を買おうかやめようかあれこれ比較検討して悩んでいるわけではない。ましてや、開発に心血を注いだ当事者でもないし、使い勝手をなんとか伝えるために明日の売り場での説得トークに頭を痛めているわけでもない。もっというと、スペック一覧はどう作るかなんて考えたことはないだろうし、商品にそこまでの思い入れもない。そんな立ち位置なら、文章による情報は、紙面を汚すゴミにしかみえないのだろう。まあしようがない。

しかし、その商品を買いたいと思っている見込客は違う。目をさらのようにして、紙面に書かれた文字情報を読みとろうとするだろう。この商品を手にいれることでどんなふうに生活が便利になるのだろうか。評判はいいのだろうか。あれを選ばずに、これを選ぶことで損はしないだろうか。そういった逡巡にプラスとなるような情報をなんとか探したい。そんな構えで広告やカタログを見るのだ。

また、たとえどんな商品であれ、そこには企業の貴重な知識が、それも大量に蓄積されている。ほんとうにたくさんの人の思考と想いがこの1点に集中している。語るべきことは山ほどあるはずだし、開発者、技術者、生産者、営業マンにとってみれば、山ほど語ってほしいはずだ。企業はこのことを諦めてはならない。

モノを買うためには、モノを売るためには、もっともっと情報が必要だ。その情報の仲介にコピーライターとデザイナーは腐心しなければならない。長いコピーを、いかに退屈させないで読ませるか。いかにストレスのないデザインで読ませるか。

消費者は文字を読まない、というのはあまりにも消費者をバカにした勘違いだ。WEBページの現実、そこに大量の文字情報があふれているという現実を知らないんだ、と言われてもしかたがない。

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