10年前から、いや20年前からBLOGというしくみがあったらよかったのになあ。だって、いまとなってはマンションの脆弱な床構造に多大なる負荷をかけるだけとなってしまった、でも愛すべき蔵書についてリアルタイムでしっかり語ることができたじゃん。
ということで、お気楽エントリーとして、ぼくの家に存在する、少しは珍しい本や雑誌とか、読書歴のなかでエポックになった本を順に公開していくことにします。まあ、お気楽におつきあいください。
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これはいつ頃だろうか?こんな本、いまでも入手できるのだろうか?奥付を見ると昭和63年10月2日、え~っと1988年だから17年も前だわ。きっと働き出して、多少は自由に使えるお金もできたんで懐古趣味を満たすために散在したのだろう。
『OHの肖像 大伴昌司とその時代』(竹内博、飛鳥新社)。大伴昌司って?たぶん、ほとんどの方が知らないとは思うが、もっともわかりやすい彼の仕事は、まず第一に怪獣図鑑の人。ウルトラマン、ウルトラセブンが少年たちの心を捉えてはなさなかった頃、円谷プロの特撮に登場した怪獣をほぼオンタイムでイラスト化し、あるのかないのかわからない内臓までをスケルトン化して緻密に書き込みんだもの、といえばおわかりいただけるかもしれない。「どんな音でも聞こえる耳」とか「バルタン肺=地球の空気にもなれるために、とくべつなしくみでできている」といったコールアウトも加え徹底的に図解するという例のあれだ。最終的なイラスト化はイラストレータに任せるとして、彼は、アイデア・構図・構成などのすべてを担当していた。
そしてなにより有名なのが、1960年代の少年マガジンの巻頭を飾り、子どもたちの人気を掻っ攫っていたグラビア記事の編集。大伴は、編集者&デザイナーとして、これをほとんどひとりで構成していた。グラビアといっても、いまの漫画週刊誌のようなエロチカ系アイドルのプチ写真集のようなものではなく、少年たちの下世話なB級趣味やSF&怪奇趣味、覗趣味、サブカルチャー欲、ときには社会意識をかきたてるような多岐にわたるテーマを、数ページにわたり、イラスト&緻密な図解、写真で構成したものだ。
『OHの肖像 大伴昌司とその時代』は、SF作家を出自とし、怪獣博士とも呼ばれ、そしてその少年マガジンカラー大図解の仕事において稀代のビジュアル魔術師・天才編集者ともよばれた、大伴昌司の短い生涯を証言で構成した記録である。
小野耕世による大伴の人物評があるので引用すると…
「大伴昌司氏の仕事で、最も私が強調しておくべきだと思っているのは、「少年マガジン」の巻頭を飾っていた、カラーグラビアである。はじめは、怪獣のしくみや、世界の怪奇現象の図解といったふうな<特ダネ図解>であった。もちろんそれは、図解としてすばらしくていねいで、細部まで正確なものだったが、後には、おとなの一般誌ですらここまではできないというほど、多方面にわたってユニークな題材をとりあげ、その切り込みかたや、レイアウトも、群を抜いていた。」ということになる。B級界の荒俣宏しかしその想像力・表現力は荒俣以上、漫画界の花森安治しかしその偏執ぐあいは花森以上といったところか。
ちょこっと写真をのせてみたが、少年マガジンのグラビアの特集テーマは具体的には「大妖怪」「恐怖の未来」「スパイ超兵器大図鑑」「ビートルズの遺書」「地球SOS!」「黒澤明の世界」「異次元の世界」「交通は爆発する」「圭子歌集」「CIA入門」「20世紀の戦争」「現代まんがの誕生」「死をまつ世界」「アラブゲリラ」「劇画入門」「まだ解かれていないふしぎベスト20」「ひとりぼっちの旅」「ドライブ入門」「ウルトラマン決戦画報」などかなり拡散的にテーマを設定している。
「ああ!」と思い出された人も多いだろう。ものすごく子どもっぽいテーマもあれば、いまの漫画雑誌では絶対にボツると思われるような、すれすれ企画などそのアンテナは多岐にわたる。そして、それぞれの内容は、かなり深く、たとえば、かなりの精度で来るべき次世紀を予見している特集があったりするいっぽうで、なんというか細部までほんとうに正しいかと問われると、まあ漫画雑誌の特集だから目くじらたてるなよ、といいたくなる虚言のようなものもあったりする。
たとえば、「情報社会 きみたちのあした」というのをみてみると、「情報社会では、犯罪捜査は情報センターが中心になるだろう。犯罪が発生すると、巨大な電子計算機(コンピュータ)が活動して犯人をつかまえ、判決までくだすのだ。」とか「もしこの暗号(DNA)の組み合わせの順序をかえてみたらどうだろうか。親とは性格や形のちがった(動物の)子どもがうまれてくるだろう。」とか、カード電話、テレビ電話といった言及もあり、これは60年代後半にもかかわらず、かなり正しく未来を捕らえている。
しかし一方で「世界大終末」なんて特集では、第3次世界大戦、伝染病の大流行、隕石の衝突、地球脱出計画など、まるで「とんでも本」のようではある。
こういった、大伴が編集したグラビアの仕事を、ほぼ当時の原稿を複写した形でまとめたのが週刊少年マガジン創刊30周年記念出版と銘打たれた『復刻「少年マガジン」カラー大図鑑』(講談社)。副題は「ヴィジュアルの魔術師・大伴昌司の世界」。これは1989年7月1日初版。当時でも6,900円という思い切った価格だったが、いまはamazonではユーズドで20,000円になっていましたよ。
約400ページにわたり、図解ページを原寸中心で再現しているのは、かなり魅力的だがそれだけではなく、当時の少年マガジンの表紙などもカラーで紹介されていて、これもかなり面白い。なかでも、横尾忠則のアートディレクションによるあまりにも有名な星飛雄馬モノトーンの少年マガジンの表紙に始まるグラビア企画「横尾忠則の世界」が掲載広告も含めて、全ページ紹介されているのは圧巻だ。
ここにある好きだからこそ楽しみながらできるという精神は、ある意味では視野狭窄ではあり、偏執的でもあるが、ひょっとすると、しおれてしまっている現在の雑誌づくりになんらかの刺激ににはなるかもしれない。
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↑このほか、サンリオ文庫とか、雑誌の
↑創刊号などが続く予定。今の本が知りたければ
↓本と読書のblogランキングサイトへGO!
ということで、お気楽エントリーとして、ぼくの家に存在する、少しは珍しい本や雑誌とか、読書歴のなかでエポックになった本を順に公開していくことにします。まあ、お気楽におつきあいください。
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これはいつ頃だろうか?こんな本、いまでも入手できるのだろうか?奥付を見ると昭和63年10月2日、え~っと1988年だから17年も前だわ。きっと働き出して、多少は自由に使えるお金もできたんで懐古趣味を満たすために散在したのだろう。
『OHの肖像 大伴昌司とその時代』(竹内博、飛鳥新社)。大伴昌司って?たぶん、ほとんどの方が知らないとは思うが、もっともわかりやすい彼の仕事は、まず第一に怪獣図鑑の人。ウルトラマン、ウルトラセブンが少年たちの心を捉えてはなさなかった頃、円谷プロの特撮に登場した怪獣をほぼオンタイムでイラスト化し、あるのかないのかわからない内臓までをスケルトン化して緻密に書き込みんだもの、といえばおわかりいただけるかもしれない。「どんな音でも聞こえる耳」とか「バルタン肺=地球の空気にもなれるために、とくべつなしくみでできている」といったコールアウトも加え徹底的に図解するという例のあれだ。最終的なイラスト化はイラストレータに任せるとして、彼は、アイデア・構図・構成などのすべてを担当していた。
そしてなにより有名なのが、1960年代の少年マガジンの巻頭を飾り、子どもたちの人気を掻っ攫っていたグラビア記事の編集。大伴は、編集者&デザイナーとして、これをほとんどひとりで構成していた。グラビアといっても、いまの漫画週刊誌のようなエロチカ系アイドルのプチ写真集のようなものではなく、少年たちの下世話なB級趣味やSF&怪奇趣味、覗趣味、サブカルチャー欲、ときには社会意識をかきたてるような多岐にわたるテーマを、数ページにわたり、イラスト&緻密な図解、写真で構成したものだ。
『OHの肖像 大伴昌司とその時代』は、SF作家を出自とし、怪獣博士とも呼ばれ、そしてその少年マガジンカラー大図解の仕事において稀代のビジュアル魔術師・天才編集者ともよばれた、大伴昌司の短い生涯を証言で構成した記録である。
小野耕世による大伴の人物評があるので引用すると…
「大伴昌司氏の仕事で、最も私が強調しておくべきだと思っているのは、「少年マガジン」の巻頭を飾っていた、カラーグラビアである。はじめは、怪獣のしくみや、世界の怪奇現象の図解といったふうな<特ダネ図解>であった。もちろんそれは、図解としてすばらしくていねいで、細部まで正確なものだったが、後には、おとなの一般誌ですらここまではできないというほど、多方面にわたってユニークな題材をとりあげ、その切り込みかたや、レイアウトも、群を抜いていた。」ということになる。B級界の荒俣宏しかしその想像力・表現力は荒俣以上、漫画界の花森安治しかしその偏執ぐあいは花森以上といったところか。
ちょこっと写真をのせてみたが、少年マガジンのグラビアの特集テーマは具体的には「大妖怪」「恐怖の未来」「スパイ超兵器大図鑑」「ビートルズの遺書」「地球SOS!」「黒澤明の世界」「異次元の世界」「交通は爆発する」「圭子歌集」「CIA入門」「20世紀の戦争」「現代まんがの誕生」「死をまつ世界」「アラブゲリラ」「劇画入門」「まだ解かれていないふしぎベスト20」「ひとりぼっちの旅」「ドライブ入門」「ウルトラマン決戦画報」などかなり拡散的にテーマを設定している。
「ああ!」と思い出された人も多いだろう。ものすごく子どもっぽいテーマもあれば、いまの漫画雑誌では絶対にボツると思われるような、すれすれ企画などそのアンテナは多岐にわたる。そして、それぞれの内容は、かなり深く、たとえば、かなりの精度で来るべき次世紀を予見している特集があったりするいっぽうで、なんというか細部までほんとうに正しいかと問われると、まあ漫画雑誌の特集だから目くじらたてるなよ、といいたくなる虚言のようなものもあったりする。
たとえば、「情報社会 きみたちのあした」というのをみてみると、「情報社会では、犯罪捜査は情報センターが中心になるだろう。犯罪が発生すると、巨大な電子計算機(コンピュータ)が活動して犯人をつかまえ、判決までくだすのだ。」とか「もしこの暗号(DNA)の組み合わせの順序をかえてみたらどうだろうか。親とは性格や形のちがった(動物の)子どもがうまれてくるだろう。」とか、カード電話、テレビ電話といった言及もあり、これは60年代後半にもかかわらず、かなり正しく未来を捕らえている。
しかし一方で「世界大終末」なんて特集では、第3次世界大戦、伝染病の大流行、隕石の衝突、地球脱出計画など、まるで「とんでも本」のようではある。
こういった、大伴が編集したグラビアの仕事を、ほぼ当時の原稿を複写した形でまとめたのが週刊少年マガジン創刊30周年記念出版と銘打たれた『復刻「少年マガジン」カラー大図鑑』(講談社)。副題は「ヴィジュアルの魔術師・大伴昌司の世界」。これは1989年7月1日初版。当時でも6,900円という思い切った価格だったが、いまはamazonではユーズドで20,000円になっていましたよ。
約400ページにわたり、図解ページを原寸中心で再現しているのは、かなり魅力的だがそれだけではなく、当時の少年マガジンの表紙などもカラーで紹介されていて、これもかなり面白い。なかでも、横尾忠則のアートディレクションによるあまりにも有名な星飛雄馬モノトーンの少年マガジンの表紙に始まるグラビア企画「横尾忠則の世界」が掲載広告も含めて、全ページ紹介されているのは圧巻だ。
ここにある好きだからこそ楽しみながらできるという精神は、ある意味では視野狭窄ではあり、偏執的でもあるが、ひょっとすると、しおれてしまっている現在の雑誌づくりになんらかの刺激ににはなるかもしれない。
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↑このほか、サンリオ文庫とか、雑誌の
↑創刊号などが続く予定。今の本が知りたければ
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あなたの書棚はすごいよ!
あの書棚の前で酒飲みながら
過ごしたら楽しいでしょうね。
すこし寒いかも…(sou)
ぜひ、いつでも、お気軽にお越しください。
面白い小説もありますが、
今日ご紹介したような
ちょっとなつかしい我楽多もありますので、
たぶん楽しんでいただけると思います。