史跡訪問の日々

幕末維新に関わった有名無名の人生を追って、全国各地の史跡を訪ね歩いています。

「全国藩校紀行」 中村彰彦著 PHP文庫

2015年01月24日 | 書評
ほぼ十年前、作家中村彰彦氏が藩校を訪ねて全国を旅した紀行文である。このたび文庫化されたが、なかなか教唆に富んだ内容となっている。中村氏は ――― 少々、会津藩に肩入れしている傾向はあるものの ――― 薩長土肥といったメジャーな存在だけでなく、全国の無名の藩の歴史まで精通している方である。本書でも、会津藩校日新館、薩摩の造士館、長州の明倫館といった比較的知られた藩校だけでなく、高遠藩や徳島藩のような、あまり取り上げられることのない、マイナーな藩にも光を当てているのが特徴である。
藩校における教育が、藩風を形成する一要素となっているのは間違いのないところであろう。
巻末の山内昌之東大名誉教授との対談で、中村彰彦氏が
「概して西国が蘭学などの実学の精神を採用してリアリズム的であるのに対して、いわゆる東北諸藩が気候的にも厳しいし内陸部の藩もあって、どちらかというと観念論的な傾向が強いですね。その結果として、戊辰戦争とは“観念論対リアリズム”の角逐だったようにも思える。」
と指摘しているのは、全国の藩史に満遍なく精通している中村氏ならではの至言である。
幕末には、ほぼ各藩に藩校が開設されたが、今日まで往時の姿をとどめている例は少ない。その多くが「藩校跡」の石碑が設置されているのみとなっている。自分も福井藩校明道館を前身とする高校を出ただけに藩校への想いはひとかたならぬものがある。是非、藩校創設の想いや藩校の産み出した人材を大事にして欲しいと願うばかりである。

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