音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

トゥルース (ジェフ・ベック/1968年)

2011-08-12 | ロック (イギリス)


ジェフ・ベックとの出会いは意外に遅く、「ブロウ・バイ・ブロウ」が最初だが、この後、すぐに聴いて感動したのがこの作品だ。私はこの作品に出会っていたから、その後の英米音楽事情や中心となるミュージシャン、更には70年代後半から80年代に掛けては、特に英国音楽のヒットシーンは略、予測することができる様になっていた。つまりは、そのくらい重要なアルバムであったことが、今更ながらこの作品に集約されているという訳である。

今でこそロックの元祖的な扱いをされるヤードバーズであるが、このバンドは当時はイギリスにおいては「音楽通好み」の特殊なバンドであり、よくその活躍が同時期に売れていた「バーズ」と混同されることが多い。エリック・クラプトンと、それにレッド・ツェッペリンへの連携が後々このバンドを神格化させたが、そのツェッペリンの橋渡しという点で最も重視されるのがこの作品である。私は幸か不幸か、この作品より以前にツェッペリンのファーストアルバムを聴いていた。そして無論そのアルバムをとても賞賛している立場であったから、この作品を聴いたときほど驚いたことはなかった。だって、この1枚で、ヤードバーズの"LIVE YARDBIRDS FEATURING JIMMY PAGE"とツェッペリンのファーストを結ぶ証明を、まるでDNAの失われた螺旋のパーツを見つけた様な感動であった。結果論であるが、ヤードバーズのLIVEは1968年5月、その後8月に出した親友ベックのアルバムで、ジミーペイジは自分の方向性を示唆したことは、今となっては定説である。そして、その大きな要因はなにかというと、当時もその後も、クラプトンやジミヘンは明らかにブルースを軸とし、ロックに傾倒していた一方でペイジ、並びにツェッペリンは完全にハードロックに軸足があるが、この作品はその丁度真中にありつつ、若干ロックに近づいていることだ。そしてこのバンドの面々、ロッド・スチュアート、ロン・ウッド、エインズレイ・ダンバーという構成はそのまま、ロバート・プラント、ジョン・ポール・ジョーンズ、ジョン・ボーナムと同様だからである。そして、こと、ジェフとロッドに関していえば、この作品が彼らの音楽作品の中でも、未だかつて、最高の作品であることも間違いない。特に個人的には"Shapes of Things"と"Rock My Plimsoul”、"Blues De Luxe"はギターもヴォーカルも大好きだ。ただ、この2枚を聴き分けると、これは私の持論でもあるが、ペイジはギタリストとしてよりも、アレンジャーとしての才能が突出していて、例えば、ツェッペリンの"Good times bad times"のアレンジを聴いたら、この2枚のアルバムが1年足らずの間に作られたとは思えないほど、音が見事に洗練されている。やはりハードロックは、ツェッペリンから始まったのである。

ただ、ベックという人も勤勉な音楽家で、その後アレンジに関しては斬新さはないものの、秀作を発表しつづける中で、事実上「ワイアード」はフージョン音楽として数少ないロック側からの提唱となった。ツェッペリンほどの音楽界を左右するほどの出来事ではなく一ブームとして終わったが、ブルース、ロック、ジャズの融合と共存に常に真摯で真面目な人柄が窺える類稀なミュージシャンである。


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