シャープが中国・南京とメキシコに持つテレビの組立工場を、資本業務提携先の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業に売却する方向で調整していることが17日、分かった。オリンパス株など保有株も売却する方針だ。液晶事業の不振などで、同社は平成25年3月期に2500億円の最終赤字になる見込み。資産売却を加速させ、経営の立て直しを急ぐ。
栃木県矢板市などで手掛ける国内のテレビ組み立ては大幅に縮小する方向で検討する。公表している約5千人の人員削減以外に、追加のリストラ策を進めて経営基盤を立て直す。
保有株売却では、発行済み株式の0・6%を保有するオリンパス株のほか、大和ハウス工業などと共同出資するリチウムイオン電池の製造会社「エリーパワー」の保有分(9・8%)も売る方向。約9%を保有するパイオニア株も「売却を含めて検討する」(シャープ幹部)という。
液晶パネルを生産する亀山工場(三重県亀山市)を別会社化して他社から出資を受け入れる案や、エアコンや複写機事業を売却する案も浮上している。だが、シャープ幹部は同日、「まったく検討していない」と否定した。
主力取引銀行のみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行は600億円超のつなぎ融資を検討。さらに追加リストラや鴻海の出資を条件に、数千億円規模の融資枠を設定する方向だ。シャープは総額500億円規模の追加増資も検討し、米投資ファンドなどに出資を打診しているとみられる。
一方、3月に合意した資本業務提携では、鴻海がシャープ株を1株550円で取得し、約9・9%を出資する予定だった。だが、その後のシャープ株の下落を受け、両社は取得額の見直しを協議。鴻海は出資比率を20%程度に引き上げることを求めているもようだ。
同日の東京株式市場でシャープ株は事業売却が浮上したことで「収益力が落ちる」(証券アナリスト)との懸念が広がり、一時、前日終値比5円安の170円まで売られた。終値は9円高の184円だった。