すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

ヒトの形(2)

2022-06-02 22:29:28 | 老いを生きる

シートに背を沈めると
骨髄の奥から
疲れがじわじわと滲み出して
全身に広がってゆく

山に登るために乗った列車だが
今日はどこまで行けるのだろう?

この日頃 ノートもつけず
音楽もせず
力仕事など無論縁がなく
何をしていたから
という訳ではないのに
枯草を這う燠火のような
この熱はなんだろう?

 人という仮の形を採り続けることは
 (人に限らず全ての生き物も同じだろうが)
 それだけで多大なエネルギーを消耗している

だから歳を取ってくるとそれが
なかなかシンドクなるのだ
気を張り続けていないと
ふっと今の形を失いそうになる

このままシートにもたれて
うたた寝してしまったら
この席に何か別のものがいるかもしれない

 若くして死んだぼくの恋人は
 本当は白い鳥だったのだ

ぼくはクラゲかウミウシか
あるいは形を持つこともできないものか
シートに塩水だけが残るのか

今の体力には少しキツい山に
好んで登るのは
ヒトの形を採り続けるための
抵抗戦かも知れない

・・・などと考えているうちにも
車窓に美しい緑の谷や尾根が広がり巡り
列車は目的地に近づいていく

さあ今のうちに気を入れ直せ
まだもう少しの間
この形のままでいたいなら

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1 コメント

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Unknown (国見靖幸)
2022-06-02 23:38:30
ノートと音楽してらっしゃるじゃないですか(^o^)?
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