すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

乾徳山再訪

2019-10-10 22:29:23 | 山歩き
 乾徳山は、姿良し、スリル満点の岩場あり、大展望あり、気持ちの良い草原あり、美味い湧水が2ヶ所あり、登り応えあり、で人気の高い山だが、若いうちは良いのだが、高齢登山者にはなかなかキツイ山だ。麓から往復すると、登山地図上の所要時間がおよそ7時間。いわゆる「8の字コース」を取るとさらに30分。日暮れが早くなってきたこの時期には、ぼくらの脚ではその日の体調によっては途中で日が暮れてしまう恐れだってある。。
 それで、今回は登山口より約500m高い大平高原まで車で行って(友人の車で、彼が運転)、前回とらなかった迂回下山道を戻ることにした。水場は通らないのが残念だが。
 広々と展望の開けた林道を進み、尾根道と合流してしばし急登。国師ヶ原に行く (帰りに通る) 林道との分かれ道に出てさらに登るとほどなく、両側の樹高の低い、平らに近い道を辿るようになる。ところどころ展望も開けて、風と日差しが心地よい。このあたりはむかし牧場だったところだ。やがて広い草原状の緩い傾斜地に出る。富士山や八ヶ岳が見える。大きな岩は「月見岩」だ。昔は牧童たちがここで麓を思って淋しく月を眺めのだろうか。
 ここに来ると、故郷に帰ってきたような気持ちになる。ぼくの故郷は眼下の谷のだいぶ下流で、ここから遠望できるわけではないが。
 4年前に来たときに、ここの草原でフキを採集している人と立ち話をしたら地元の人で、ぼくの生家を知っていると言われてびっくりしたことがある。
 乾徳山は故郷の山だ。それは以前に書いたからまた書くことはしないが。
 草原の外れから、岩の多い急登が始まる。今日はトレラン・シューズで来たのだが、草原状の場所などはまことに快適なのだが、湿った地面に岩が続くと、岩に乗ったときに靴底が濡れていて滑ることが分かった。つまりソールのグリップ力が弱いのだ。この靴を買う時に店員さんに「軽量にするためにゴアテックスを使ってませんから、雨の日には向きません」と言われたのだが、弱点はほかにも意外なところにあったんだ。
 山頂近く、厳しい岩場が2か所。初めのは鎖に掴まらずに何とか登ることができる。頂上直下の「鳳岩(おおとり岩)」は、前回は岩の割れ目に登山靴を入れることができず、鎖に縋って登った。今回は靴を入れることは何とかできるが、ぼくの今の腕力では体を引っ張り上げることができない。今回もやはり途中ちょっと鎖頼りだ。残念だ。今から腕力を鍛えるのもなあ。
 それはさておき、山頂は大展望だ。6月に登った甲武信ケ岳も目の前に見える。
 ゆっくりお昼ごはんを食べて(今日はミニカップ味噌ラーメンとコンビニで買った海鮮巻きずしと、ココア)、道を引き返さずに北に向かう。小さな鉄梯子を3つ下りて鞍部に出て大きな岩場の手前で振り向くと、乾徳山の北斜面はまことに険悪な姿だ。頂上付近が岩壁、というのならあちこちの山にあるが、ここは下から急激に無造作に乱雑に大岩が積み上がっただけで、ちょっとしたはずみで山頂全体が一気にガラガラとくすれ落ちそうな気配だ。あの上でのんびりご飯を食べていたのか、と寒々とする。
 15分ほど進むと分岐点で、左に下りていく道は「ガレ場の急降下あり。注意」と書かれている。これは登山地図には難路を示す破線で記されているのだが、「下る人はたくさんいるだろうから、そう悪くはないはずだ」と思っていた…ところが難路だった。
 急斜面の足元の悪い下りで、あまり人が通っていないらしく、道がはっきりしない。かなり間隔を置いて木に巻いてある赤テープを確認しながら降りるのだが、そのテープも古くなっていて見つけにくい。先を行くぼくが戸惑っていると後ろからくる相棒が「左手のあそこにあるよ」とか指示してくれる。相棒がいるから良いが、ぼく一人だったら、道に迷って日が暮れるのが怖いから、来た道を戻ったかもしれない。
 ここで後ろからカップルが追い付いてきた。「わかりにくいですね」と言ったら、「ええ、あとをついてきました」という。「あはは、じゃ、年寄りはここらで選手交代にしましょう」といって道を譲った。ほどなく、枯れた沢状の下りになった。「これで少し安心だね。今の、ガレ場の急降下、はきつかったね」と相棒と話したのだが、じつはここからがガレ場の急降下だったらしい。転ばないように慎重に慎重に降りてゆく。前のカップルも苦闘しているようだ。
 涸れた沢を離れ、それでも足元の悪い道が続き、前の二人は姿が見えなくなる。ちいさな道しるべを見つけてホッとする。きんつばを食べて気を取り直してさらに進む。道が水平に近くなり、「高原ヒュッテ」の屋根が見える。ヒュッテの前でさっきの二人が休んでいた。「悪路でしたね」「でも楽しかったですね」と、安心してお互いの声が明るい。
 ここからは林道を進み、今朝の分岐点から元の道を戻る。疲れた。転倒しないで良かった。岩場や石ころ道が予想されるときは、やはり踝まである山靴を履いてこよう。

参考所要時間:大平Pスタート9:50、国師ヶ原分岐10:35、月見岩11:27、山頂12:45、昼食、下山スタート13:35、水のタル分岐13:52、高原ヒュッテ15:20、大平P着16:20
(ぼくらにはこの時期、このコースでやっとだね。麓から行ったら途中で日が暮れていた。)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする