富山マネジメント・アカデミー

富山新聞文化センターで開講、教科書、参考書、講師陣の紹介、講座内容の紹介をいたします。

富山経済と<円高ドル安トレンドとマイナス経済>の相関(校正済)

2016年04月30日 | Weblog

TMA講師代表:個人研究として、いつも北陸経済圏の「一年先の経済トレンド予測」を心がけている。ここでは、問題を富山県内企業に焦点をあてる。

IMFが予測しているように、日本経済全体では成長率はマイナス・トレンドに転じるが、富山経済ではどうなるのか、という問題群である。

最も大きな影響があるのは、世界の自動車産業の成長に関係する中国における個人消費市場動向と、アメリカにおける日本車の販売動向である。これは、前年比で大幅なプラス成長は期待できない。良くても、横ばいか、微減である。中国市場を壊滅と考え、恐慌を想定する必要はないが、自動車産業系が成長の牽引力と考えるには無理がある。富山の製造業、例えば、不二越の車載ベアリングは、円高では価格競争力が低下し、仕向け地で求められる製品の需要予測を誤ると、日本企業の全体トレンドよりも落ち込むことになる。海外市場のマーケッティングでは、富山の企業には特殊に優れているというセンサー型の人材が少ない。わずかな先行データーから、回帰方程式のY=aX+Bのaの値の部妙な変化から最終需要予測を割り出す単純な作業であるが、理工系の人材が喜んで市場動向の統計予測を好む社風がないと、マイナストレンドの経済趨勢に対応できない。作り過ぎない、ロスを生まない制御が必要となる。企業名は挙げないが、自動車の部品を専業とする中小企業は、こうした市場管理と予測のメネジメント技術をもっていない。したがって、自動車関係は底割れが予測される。しかし、そのトレンドはすでに2015年から始まっており、「円高」という為替差益・差損の問題ではない。企業の頭脳の問題である。このように自動車の部品、仮に航空機の部品にしても、牽引力にはなれない。マイナス方向に作用することが想定される。

富山の産業のなかで、住宅建材産業の占める割合は高い。内需のうちの個人消費は、消費税の動態に左右されるが、地方の中間的な公共財への公共投資がマイナス金利により促進される。マイナス金利政策は、建築・建材の追い風となるので、全国的には大きな内需の柱となってくる。YKKap㈱と三協立山㈱ともに有利な風向きとなった。特に原料のアルミや、石油製品である化成品の原価が、原油安、円高差益により圧縮される。昨年の1ドル120円のスパンよりも、1ドル105円前後というスパンでの円高傾向は、消費税の増税が見送られるならば、日本の内需経済の循環の牽引力となる。富山県の産業は、ガラスを含め建材に強いので、富山経済は次年度にむけマイナス成長に転じるとは考えられない。最後に、2017年度にむけて富山のジェネリック医薬品の生産高は、首位の埼玉県と並ぶか、追い抜く可能性がある。大手の製薬業からのOEM生産の伸びは、景気循環に鈍感な薬業が成長することで、富山経済の構造安定に大きく寄与すると思われる。

最後に富山経済の最大の弱点を指摘すると、地場のロジスティクス企業が脆弱であることが目立つ。岐阜の西濃運輸に引けをとらない運輸業が伸びきれていない。岐阜には空港も、海運もない。富山には、その両方がある。それなのに、総合的なロジスティクス産業への脱皮が岐阜よりも遅れている。富山の地方創成の事業として、TMAが期待しているのは、人とモノを運ぶシステムの統合行政の指導力である。地方自治体が運営する海港と空港を活かすのは、自治体それ自身の財政力を高めることになる。これは、自治体の頭脳の問題である。

 さしあたり、航空貨物に関しては、石川、新潟、長野、岐阜という広域の集配機構が可能である。この点は、ANAからの提案は最重要である。航空貨物は、電子部品と生鮮食品の輸送に最適である。日本では、ANAは沖縄の航空貨物の基地をおいている。富山空港は、石川、新潟、長野、岐阜という広域の集配機構となりうる。これは、医薬品の原材料の輸送にも適している。医薬品は、最大のロット数が小さな貨物であるという特性がある。こうしたロジスティクス関係は、原油安、円高による燃料費の低減により、収益環境が良くなるので、上向きのトレンドのなかで構造改革する余地が生まれる。構想改革は、先行投資であるからマイナス金利の環境は競争優位につながる。

富山経済の強みは住宅建材とジェネリック医薬品、停滞から減速は自動車部品関係の機械系、構造的弱点はロジスティクス産業部門の行政統合力。

 

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする