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今日の筆洗

2021年12月10日 | Weblog

ユニホームをめくり、アンダーシャツに書いたメッセージを伝える。内容が政治的であれ、個人的であれ、サッカーではご法度とされる▼Jリーグでは約二十年前、名古屋のストイコビッチ選手が味方の得点後、この手法で「NATO(北大西洋条約機構)は空爆をやめよ」と訴えた。空爆の標的は母国ユーゴスラビア。国際政治への異議申し立てが議論を呼んだ▼浦和の槙野智章選手が先日の名古屋戦後にユニホームを脱いだことは、例外としてたたえられるべきだろう。アンダーシャツに記されていたのは、この試合でトップリーグの審判を勇退する主審の村上伸次さん(52)への感謝の言葉▼シャツの文字を見せようと目の前に立った槙野選手に、村上さんはイエローカードを示した。機知に富んだ対応で正式な警告ではなく、すぐに二人は握手した▼槙野選手のシャツには「村上さんの笑顔が僕たちを気持ちよくプレーさせてくれました」とあった。スポーツ誌のウェブ版を見ると村上さんも昨年、仕事への思いをこう語っていた。「毅然(きぜん)とした態度を持ちつつ、決して意固地になったり、上からになるのではなく、きちんと選手とコミュニケーションができるか。レフェリーも人間性だと思います」▼権威をもって周囲を圧するのではなく、意思疎通を密にしながら導いていく。政治に関わる人にも、役立ちそうな心得である。