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今日の筆洗

2020年12月11日 | Weblog
 天から才能を授かった人の重い覚悟を表しているような句がある。<二兎(にと)を追ふほかなし酷寒の水を飲み>。物理学者で俳人の有馬朗人さんである▼「朗人君は出句しておいて、隣室で卓上計算機をガラガラ廻(まわ)してゐた」。師であり科学者でもあった俳人山口青邨(せいそん)は、驚きを込めて有馬青年の東大学生時代を述懐しているという。若いころから全力で二兎を追い、いずれの世界でも一流になった人である。有馬さんの訃報が先日届いた。九十歳だった▼浜松一中時代に父が他界し、その後、働きながら学ぶ苦労の日々が始まる。<努力して自転車をこいでいるうちは倒れない…私の人生は自転車操業>と著書にある。精いっぱいの努力で、倒れなかったのだと▼物理学の「有馬・ヤッケロー理論」はノーベル賞級という。俳句では、最も権威のある蛇笏(だこつ)賞を一昨年受賞した▼若いころ、ノーベル賞物理学者の朝永振一郎にかけられたという言葉を大切にしてきた。「若いうちにいい夢を見ておきなさい。小さな夢を見るだけだと、小さなことで一生終わる。できるだけ大きな夢を見なさい」。政治家になり、文部大臣を務めたが、若い人にいい夢を見せたいという思いは、いくつ目かの兎(うさぎ)を追う力だったようだ▼若者への科学の普及や俳句の国際化も自らの仕事にしてきた。全力でペダルをこいで、はるか遠くまで走り続けた人である。

 


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