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今日の筆洗

2024年05月30日 | Weblog
長野県でおはぎやぼた餅のことをいう「半殺し」。半分ほどつぶした、もち米でこしらえるからだろう。「きょうは半殺しに」。知らぬ人が聞けば肝をつぶす▼これも物騒な方言か。岡山県の「半裂き(ハンザキ)」。心配はご無用。特別天然記念物のオオサンショウウオのことで身を半分に裂かれても死なないほど生命力が強いと信じられていた▼岡山県には人や馬をのみ込む巨大なオオサンショウウオが退治されたという伝説もあるそうだ。猛々(たけだけ)しい伝説や「ハンザキ」の名とは裏腹に日本のオオサンショウウオは今、深刻な危機に弱っているのだろう。政府は日本固有種のオオサンショウウオの保全に向け、外来種のチュウゴクオオサンショウウオなどを「特定外来生物」に指定した▼チュウゴクオオサンショウウオは1970年代に食用として日本に持ち込まれたとされ、やっかいなことに攻撃的で寿命も長いそうだ▼日本のオオサンショウウオの繁殖場所を奪うほか、交雑が進んでしまい、京都・鴨川の個体調査によると9割までが交雑種になっていた。「ハンザキ」が消えかねない▼指定によって、7月1日以降、外来種とその交雑種は飼育や放出が禁止となる。井伏鱒二の『山椒魚(さんしょううお)』を思い出す。岩屋から出られなくなった孤独な山椒魚の話だったが、今欲しいのは人の知恵で築いた、固有種保全の「岩屋」なのだろう。