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今日の筆洗

2024年05月03日 | Weblog
 海外渡航の自由は憲法22条2項が保障する。何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない-とあり、旅行も自由と解される▼1964年まで観光目的の海外旅行が解禁されなかったのは、戦後復興期の国内産業保護のため為替取引や貿易を制限したから。国外での散財はご法度だった▼解禁時も1人年1回限り、外貨持ち出しは上限500ドルとされた。1ドル=360円の固定相場制の時代。大卒初任給は2万円程度なのに欧州17日間ツアーが1人70万円を超え、庶民には高根の花だった▼今日は憲法記念日。連休も後半に入ったが、海外旅行は近年にない円安で大変だ。先月29日には1ドル=160円台をつけた。旅にインスタント食品を持参する人もいると聞く。昔みたいに国に命じられなくても節約は不可避らしい。超低金利政策が招いた円安。恨むなら、相手は近年の政治だろうか▼旅行の歴史を書いた白幡洋三郎氏の『旅行ノススメ』(中公新書)によると、国家は国民の海外渡航を本能的に恐れるという。かつて東ドイツ国民は同じ共産圏のハンガリーがオーストリア国境を開放すると押し寄せ、西ドイツへと逃れた。人流の圧力はベルリンの壁をも崩壊させた▼自国の長短に気付くこともある渡航。国民が異国でカップ麺をすすり、何かが間違っていないかと考えるのも、憲法が想定するところなのだろう。