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今日の筆洗

2024年05月22日 | Weblog
 「待てば海路の日和あり」とはいうけれど、この方が待ったのは約60年。良き日和に恵まれたのは海路ではなく宇宙への空路ということになる▼米国の彫刻家、エド・ドワイトさん。90歳にして米宇宙企業「ブルーオリジン」の宇宙船に搭乗し、宇宙空間に到達した。最高齢の宇宙飛行ということになるそうだ▼「待った」とはこういう経緯である。1960年代初頭、黒人差別撤廃を訴えるケネディ大統領はNASAの宇宙飛行士メンバーに黒人をどうしても加えたかった。白羽の矢が立ったのが空軍のパイロットだったドワイトさんである▼黒人初の宇宙飛行士を目指し、厳しい訓練を重ね、成績上位に食い込んだ。が、結局、NASAがドワイトさんを選ぶことはなく、宇宙へ旅立つことはかなわなかった。ケネディ暗殺で後ろ盾も失い、夢を果たせぬまま、空軍を去った▼宇宙飛行士の当時の訓練を描いた作家トム・ウルフさんの『ザ・ライト・スタッフ』(中公文庫)によると「ライト・スタッフ」(宇宙飛行士としての正しい資質)がないと判断されていたようだが、ドワイトさんはそうは思っていない。差別の影を感じていた▼宇宙旅行は約10分間。早速、「もう一度行きたい」と語っているそうだ。90歳で、なおも宇宙とおっしゃる気力と体力がうらやましい。やはり、「ライト・スタッフ」を備えたお人なのだろう。