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今日の筆洗

2019年10月29日 | Weblog
 カメラマンのロバート・キャパが第二次世界大戦の状況をこう語ったことがある。「この戦争は老いていく女優のようなものだ。どんどん写真には不向きになっていくし、どんどん危険になっていく」▼女優イングリッド・バーグマンと恋愛関係にあったキャパだが、当てはまらぬ女優がいることを教えたくなる。残念ながら亡くなった。八千草薫さん。八十八歳。亡くなるまで一線で活躍し、お年を重ねてもいつまでも見ていたい女優さんだった▼訃報に「宮本武蔵」のはかなげな「お通」を浮かべた人もいるか。決壊した多摩川に流される家から「一分でいいから」と家族アルバムを取りに戻ろうとする「岸辺のアルバム」の「則子」かもしれぬ。「けったいな人びと」「阿修羅のごとく」。戦後から現在まで大きく変わる時代にあって、それぞれの八千草薫がいた▼「清く正しく美しく」。出身の宝塚歌劇団の理想だが、そこにユーモアや人間味を加えていらっしゃった。「前略おふくろ様II」。好きな男が来ると知って、浮き浮きと「お手玉歌」を口ずさむ女将(おかみ)の役を小欄は思い出している▼子どものとき、肺を患った。学校にも通えず、本に夢中になったそうだ。あれこれ読んでは自分がお姫さまや冒険家になることを空想する。それが芝居の入り口だった▼長い旅が終わる。旅のアルバムはさぞや重かろうが、輝いている。

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