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今日の筆洗

2021年03月10日 | Weblog

 先日亡くなったテレビプロデューサーの鴨下信一さんが著書『昭和のことば』で、紹介していた曲を聴いてみる。覚えやすくて朗らかな曲調にかえって恐ろしくなる。曲は「なんだ空襲」(作詞・大木惇夫、作曲・山田耕筰)という▼一九四一(昭和十六)年、戦意高揚を目的に作られた。後の歴史を思えばあまりに残酷な歌詞だろう。<警報だ、空襲だ それがなんだよ備へはできてるぞ><敵機何台来ようと平気だよ><持ち場持ち場にかけよう命>。敵機は恐るるに足らない<蚊とんぼ、とんぼ>、焼夷(しょうい)弾は消せる<火の粉>と歌っている▼四五年の東京大空襲から十日で七十六年となる。空襲は<それがなんだよ><平気だよ>どころではなく、大勢の命を奪っていった。戦争末期とはいえ、あの勇ましい歌を信じていた人もまだいたはずだ▼空襲が奪ったのは命や財産ばかりではない。作家、吉村昭さんの体験である。ある空襲の夜、寝間着姿の高齢女性が道を這(は)っているところを見た▼抱え起こすと、「残されまして、残されまして」と繰り返す。家族に置き去りにされ、追いつこうとここまで這ってきたらしい▼どんな事情があったか分からないが、空襲という極限状態に人はまともな心を奪われ、家族さえ捨てさせるのか。「なんだ空襲」の虚(むな)しさに「地獄なんだ空襲」とつぶやく。ほんの七十六年前のことである軍歌】

 

なんだ空襲-歌詞付-

 


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