男がおぼれていた。幸いなことにボートがやってきた。「大丈夫か?」と差し出された救いの手を、この男は断った。「神さまが助けてくれる」。また、別のボートがやってきたが、やはり、「神さまが助けてくれる」。男はそのままおぼれ死んでしまう▼天国に着くと男は神さまに抗議した。「なぜ助けてくれなかったのですか」。神さまは腹を立てたそうだ。「ばかもの! ボートを二度も遣わしたではないか」。なにかの映画で聞いた小咄(こばなし)だが、巨大台風のニュースを見ながらぼんやり思い出した▼大型で非常に強い台風10号は九州全域を暴風域に巻き込みながら北へ抜けていった。避難指示、勧告の対象は約八百五十万人。大勢の方が眠れぬ一夜を過ごしたのだろう▼上陸こそしなかったが、最盛期の気圧は伊勢湾台風級の九二〇ヘクトパスカル、沖縄県南大東村では最大瞬間風速五〇・七メートルを記録したというから化け物のような台風であった▼地球温暖化が進んだ結果、日本近海の海面水温が熱帯並みに高くなってしまい、巨大な台風が発生しやすくなっている。もはや化け物は珍しくなく、これからも日本に襲来するだろう。備えるしかない▼「神さま、なぜ化け物のような台風から助けてくれないのですか」。神さまはやはり腹を立てるのだろう。こうなる前に何度も異常気象を見せて、温暖化に取り組むよう教えたではないかと。
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