最近の少年野球で人気のポジションは投手と遊撃手だと聞いたことがある。あまり人気がないのが捕手だそうだ。野村、田淵に憧れた世代とは事情が違うらしい▼確かに派手さはない。防具は重いし、捕球姿勢もつらい。危険なファウルチップもある。捕手へのためらいは子どもに限らないようだ。米大リーグに「メジャーへの近道は捕手になることだ」という格言がある。なり手が少なく、競争率が比較的低いせいだろう▼どんな野球選手の引退にも寂しさを感じるものだが、責任が重い上、けがをしやすい捕手を守り続けた選手の引退はなおさらである。ジャイアンツの阿部慎之助捕手。今季限りで引退する▼2131安打、打率2割8分4厘、405本塁打。球史に残る強打の捕手である。豪快なスイングから火の出るような打球。他チームをひいきにする者にとって、嫌な場面で痛打を放つ勝負強い選手だった。その打球音が「カーン」ではなく「ガン」と聞こえた▼デビューは二〇〇一年。当時の打線を思い出す。江藤、松井、清原、高橋由も怖いが、下位の八番に強打の新人阿部が入る。震えてくる▼まじめで寡黙な印象がある。背中で若手をひっぱる選手だったのだろう。ストッキングを見せるユニホームの着こなしも粋だった。四十歳。「まだ、やれる」とは言わぬ方がいいか。苦労の捕手を務め上げた人である。
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