「ミート・キュート」。直訳すれば「かわいい出会い」となるが、映画用語である。ロマンチック・コメディー作品などでカップルが初めて出会う場面をいう▼観客を物語に引き込むため、いかに魅力的な「出会い」を用意できるか。脚本家の腕の見せどころで、『ローマの休日』なら、道端で眠っている王女に新聞記者が心配して声を掛けるシーン。しゃれているのが『青髭(あおひげ)八人目の妻』。衣料店でパジャマの上だけほしいという男とパジャマの下だけほしいという女性が出会う▼この物語の「ミート・キュート」もおもしろい。主演は今年のノーベル生理学・医学賞に選ばれた米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授とドリュー・ワイスマン教授である▼二人の出会いはコピー機の前。コピー機の順番を待っていて、言葉をかわしたことが、共同研究のきっかけになる▼メッセンジャーRNAと呼ばれる遺伝情報を伝える物質をワクチンに利用するカリコさんのアイデア。そこにエイズウイルスのワクチンを研究していたワイスマンさんの知見が加わって、一組の「パジャマ」となったのだろう。その成果が新型コロナワクチン開発につながり、困難にあった人類を救った▼異なる研究が出会うことで新たな道を開く。カリコさんの言葉はあながち冗談ではなかろう。出会いのため「大学はもっとコピー機を置くべきね」。
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