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今日の筆洗

2019年10月08日 | Weblog
  「ああ根来よ、それにしても国鉄は弱かったよなあ。本当に弱かった」▼国鉄とは現在ヤクルトの国鉄スワローズ。かつてバッテリーを組んだ根来広光捕手への弔辞の中で、その大投手は国鉄の弱さをなおも嘆いていたそうだ。大投手も亡くなった。金田正一さん。八十六歳▼通算400勝、奪三振4490。投手の肩をいたわり、連投などもってのほかという時代を思えば、永遠に破られぬ記録だろう。高度成長期に似合った荒っぽい野球が懐かしい。長身からの直球とカーブ、ドロップ。直球は160キロ近かったという証言を信じる▼作家の山口瞳さんはかつてこう書いた。「西鉄の稲尾(和久)、巨人時代の別所(毅彦)というような人が登板すると球場がパッとはなやかになったものである。なぜか。この人たちは適当に打たれるからである」。適当に打たれても勝つ。それこそがエースだと▼国鉄のエースにそんな余裕はなかっただろう。得点は期待できぬ。国鉄時代の267敗のうち123敗は自責点2以下。2点に抑えても半分は負けとなる▼400勝に123敗を足してみる。世界記録、サイ・ヤングの511勝を上回る。もしも国鉄に入っていなかったら。やめておこう。打てぬ国鉄だから一点も許すまいと闘志を燃やし、走り込み、投球を磨いた。通算298敗。それも、また破られぬ「栄光」の大記録である。