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今日の筆洗

2018年06月16日 | Weblog

 ポーカーは心理戦だ。だから心構えに関する戒めの言葉が、たくさんある。指南書いわく、それは実力と運が共存するゲームであるがゆえに、運による短期のリスクを受け入れ、長期的視野でプレーしなければならない▼だめなのは「負けを取り戻そうと躍起になる」「下手な相手にカッとなる」「勝ち目のない勝負を挑む」ことだそうだ。公営ギャンブルで、小さく負けた経験しかない身にも染みる言葉である。取り戻そうと、負けを重ねてしまったみじめさもよみがえる▼賭けの世界で勝ち負けは、表裏一体だ。美術評論家の青山二郎は、賭場を描いた随筆『博徒風景』で勝ちながら目先の負けで熱くなり崩れる男を書いた。<一回の「負(まけ)」が信じられなくなる。負は勝(かち)の裏の模様である。…勝だけ信じられる訳(わけ)が無(な)い>。男は翌日<空き俵の様(よう)になって転がっていた>▼カジノを含むリゾート施設はわが国の成長戦略なのだという。カジノ解禁につながる法案が衆院の委員会を通った。強行採決だ。拙速感は強い▼描くのは、華やかな場所で金を落としてもらうイメージか。しかし、熱くなり<空き俵>と化す敗者たちがきっと生まれる。ギャンブル依存症の不安もまだ消えていない▼そんな世界で成長を図るのは、わが国が目指す道だろうか。そこに世の理解が進まないのが、拙速感の理由ではないか。裏目に出ないか心配だ。